E2169 – 図書館総合展2019フォーラムin須賀川<報告>

カレントアウェアネス-E

No.375 2019.08.29

 

 E2169

図書館総合展2019フォーラムin須賀川<報告>

tetteパートナーズクラブ・長谷部久美子(はせべくみこ)
図書館総合展運営委員会・長沖竜二(ながおきりゅうじ)

 

 2019年5月18日,福島県須賀川市で図書館総合展地域フォーラムが開催された。会場は,同年1月に開館した,同市中央図書館を含む須賀川市民交流センター(tette;E2142参照)である。図書館の新館お披露目と開館までの経緯報告という,これまでの地域フォーラムにならったスタイルであるが,全国より171人集まった図書館関係者(須賀川の関係者除く)は,いつになく高い関心をもっていた様子であった。

 というのも,冒頭,須賀川市民交流センター長の佐久間貴士氏が述べたように,東日本大震災という突発的な災害を背景とした復興事業のため,基本計画がそもそもないところから始まった施設であることがあり,開館までのプロセスが,様々な面で「初」であったためだろう。

●第1部

 第1部はその関心に応えるもので,開館までの道のりを語る登壇者は,設計サイドから十河一樹氏(石本建築事務所)及び畝森泰行氏(畝森泰行建築設計事務所),センター整備室長として基本設計段階から関わっていた佐久間氏,旧図書館からの司書の岡崎朋子氏(須賀川市中央図書館),市民として長谷部久美子氏(tetteパートナーズクラブ),コンサルティング側から司会の岡本真氏(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)という陣容であった。基本計画がない状態でのスタートであり,導入する機能と基本設計,さらには管理運営方法を同時に検討しなければならなかったため,行政・設計・市民が同じテーブルについて,2か月の間に25回の市民ワークショップを行うことから始めたという。スタート時点からしての官民協働・市民協働であった。

 また,畝森氏は,図書館設計の経験がない,というより公共施設を手掛けるのが初であった。行政,市民にとっても,公共施設を整備するうえで,これだけ多くの市民ワークショップを行うのは初めての経験だった。

 ゆえに,市民の意見を丁寧に拾い上げた計画は,従来的な図書館像とはかなり異なるものであった。旧図書館を引き継いでチームに加わった岡崎氏などは,日本十進分類法(NDC)にこだわらないテーマ分類,融合施設全体に図書館機能を分散して備える等にかなり戸惑ったという。

 そして計画は,当初イメージされていなかったところに落ち着いた。「ワークショップを通じてせっかくできた市民同士の横のつながり,導入する各機能間の横のつながりを,建築上で解決させたい,あらわしたい」(十河氏)ため,一般的な複合施設ではなく機能が物理的にも融けて合わさっている融合施設となった。

 以下,第1部については筆者(長谷部)の立場から図書館ができた今の思いをまとめる。

・関係者の本気を見た
 「計画当初からこのような融合施設だったわけではない。市民の声を聞いてこの形になっていった」フォーラムで畝森氏がそう発言したのを聞いて,改めて,そうだったのかと気づいた。失礼ながら,開館するまでどんな施設が出来上がるのか想像できなかったし,市民ワークショップに意味があるとは思っていなかった。謝りたい。

・市民のための
 筆者が市民代表として,tetteの管理運営協議会に参加したのは,設計が終わり,運営の話に入ってからであった。当時,整備室の室長だった佐久間氏は,協議会委員からの開館日の増加や開館時間延長の要望に対して,時に強い口調で,運営コストや管理上の課題をぶつけてくる。印象はあまり良くない。この協議会も形だけのものなんだろうなと思っていた。しかし,思いのほか協議会で出る市民の意見が反映されていく。意見を言うと次の会にはできることとできないことの理由をきちんと説明してくれる。協議会に参加するたびに,議論も活発になっていくと,自分たちの施設という意識が育っていく。テーマごとの配架,どこに行っても本がある。それも市民の目線で考えられたものであった。

・図書館が苦手だった
 従来の図書館は,騒がしい子どもを連れて行くには敷居が高かった。膨大にただ並ぶ本。面白い本も見つけられた試しがない。tetteは今までの図書館とはまったく違う。立つ場所によっていろんな顔があり,見える景色も違う。でもどこにいてもワクワクする。毎日来たくなる施設。本のある生活が身近になった。

・誰と出会うか,どんな本と出会うか,出会うタイミングによって人生は大きく変わる
 佐久間氏が『つながる図書館』(猪谷千香氏著)という一冊の本に出会って,これからの図書館が目指すべき方向性を確信し,tetteを整備する意義を見出したように,また,今回のフォーラム懇親会で隣の席になった女性が筆者にすすめた本が今の筆者にドンピシャだったように,tetteがオープンしてからの7か月,司書たちや市民ボランティア組織のtetteパートナーズクラブによる,とびっきりの本紹介や巷で話題の出来事に関連した本のコーナーはワクワクに輪をかけて図書館を面白くしている。今後も本と出会えるイベントをたくさん開催してほしい。

・tetteが持つさまざまな可能性
 これまで,須賀川市民のために本気でtetteをつくりあげてくださった関係者の期待を良い意味で裏切ることをしてみたい。公共施設というと制約も多い印象だけれどやれることはたくさんある。まずは自分がtetteをとことん楽しんで,周りをどんどん巻き込んでいきたい。

●第3部

 また,こうした市民が基本計画から大いに関わってきた図書館複合施設だという話題で終わらないのが,この施設の厚みのあるところで,第2部の協賛企業プレゼンテーションに続く第3部では,tette内にある「円谷英二ミュージアム」について報告があった。同ミュージアムの各展示物の間にも図書館機能(書棚)が入り込む。

 フォーラム中もその後の懇親会でも,大いに語られたのは,このあとtetteはどう成長してゆくのかということである。岡本氏も,「新館計画は,施設整備と施設運営が乖離しがち。ここでは設計しながら運営をどうするかも,とことん根気強く粘り強く話された」と指摘していた。市では,開館後も,設計チームの十河氏や畝森氏,コンサルティングの岡本氏などに,須賀川市民交流センターアドバイザーとして関わってもらい,その成長と経過をみてもらうこととしている。この施設は,むしろこれからがより注目されるのである。

Ref:
https://www.libraryfair.jp/news/8319
https://s-tette.jp/
https://s-tette.jp/library/index.html
https://youtu.be/YiaSaMO1nbI
https://youtu.be/wZsc1zmBxTk
E2142