E2050 – 鳥取県内の公共図書館でのデータベース共同利用が始まる

カレントアウェアネス-E

No.352 2018.08.09

 

 E2050

鳥取県内の公共図書館でのデータベース共同利用が始まる

 

 鳥取県立図書館(以下「当館」)では,県民への農業分野に関する情報提供機能強化のため,県内すべての市町村立図書館(分館含む)で一般社団法人農山漁村文化協会の農業や食に関する様々な情報を検索できるオンラインデータベース「ルーラル電子図書館」を利用可能とする契約を締結し,2018年6月から提供を開始した。

 利用を希望した18市町村24館で利用可能となっている。本データベースが都道府県内の公共図書館で幅広く利用可能となるのは,全国初の事例となる。

●経緯

 当館では,2004年からビジネス支援サービスを本格的に開始し,産業支援機関との連携,ビジネス分野の資料やレファレンス・サービスの充実を図り,仕事に役立つ図書館として様々な事業を展開してきた。サービス開始から10年以上が経過し,これからのビジネス支援の方向性を検討する中で農業に着目した。理由として,(1)2017年改訂の県の総合戦略である「鳥取県元気づくり総合戦略」で成長産業として,新規就農者の増加・担い手の育成が重点政策になっている,(2)公益財団法人鳥取県農業農村担い手育成機構と連携し,図書館で新規就農相談会を開催している実績がある,(3)農業に関する相談事例が他の分野と比較して少なく,新規開拓の余地がある,ということが挙げられる。

 これらの方向性を軸に,2018年度予算要求で図書館の農業支援に関する要求を行った。主な内容として,情報収集セミナーの開催,県内各地区でのミニ講座の開催,当館では2004年から導入しているルーラル電子図書館を県内の全市町村立図書館で利用可能とする契約,農山漁村文化協会が制作,販売している農業技術に関するDVDの収集,貸出を行うこととした。

●利用開始まで

 ルーラル電子図書館の契約に関しては,当館と農山漁村文化協会との間で,県内全市町村立図書館(分館含む)で利用可能となる契約を結び(当館が全額費用負担),各市町村立図書館へ利用希望の有無を文書で照会し,責任者・担当者・接続するIPアドレスを記載した申込書の提出を求めた。当館が申込書を取りまとめ,農山漁村文化協会がIDとパスワードの発行を行い,各館が利用するという流れである。発行後,各館での試用期間が必要と考え,正式な利用開始を6月1日とした。さらに,文書での照会と並行して,2018年度の各市町村訪問時に図書館及び教育委員会に対して,ルーラル電子図書館に関する説明を行った。費用負担はないこと,インターネット環境があれば利用できること,農業に関する様々な情報が入手可能なことを説明したところ,非常に好意的に受け入れられた。最終的には県内19市町村中18市町村から希望があった。

●利用開始後

 報道機関への資料提供,当館ウェブサイトで広報を行い,6月1日より正式に利用開始とした。地元紙からも取材があり,入手できる情報や当館の狙いなどを記事にしてもらうことができた。また,6月14日に,実際に操作することが多くなる市町村立図書館員向けにルーラル電子図書館の活用事例を中心としたデータベース活用講座を開催した。当館の相談事例をもとにカウンターでの利用イメージを持ってもらうことが狙いである。

●これから

 住民への広報機会として,農山漁村文化協会のDVDを用いた農業講座とルーラル電子図書館による情報収集講座を組み合わせた図書館活用ミニ講座を2018年8月26日に若桜町で開催予定としている。これまで,あまり図書館を利用されたことのない方へのアプローチとして行う,当館の農業支援に向けた試金石となる。この講座は今後,県内他地区でも開催予定としている。また,当館内のビジネス支援関連資料を集めた「ビジネスヒント!調査コーナー」の一角に「農業ビジネス」の棚を作り,資料の集約・見える化を進めている。

 当館の農業支援は,まだまだ十分ではない。今後は,関連機関との連携をさらに進め,これまで構築してきた図書館ネットワークの力を活かしつつ,仕事に役立つ図書館として県民に貢献していきたい。

鳥取県立図書館・岩崎武史

Ref:
http://db.pref.tottori.jp/pressrelease2.nsf/webview/0ABD5A3ABEA1FBEA49258298002CBE9F?OpenDocument
http://www.library.pref.tottori.jp/info/post-82.html
http://lib.ruralnet.or.jp/