E1944 – 日本聖書協会聖書図書館の閉館:開館から37年

カレントアウェアネス-E

No.331 2017.08.24

 

 E1944

日本聖書協会聖書図書館の閉館:開館から37年

 

 2017年6月末をもって,聖書の専門図書館である「聖書図書館」が閉館した。本稿では,聖書図書館の足跡や今後の活動について紹介する。

●聖書図書館の概要

 日本聖書協会には,1875年に北英国聖書会社,1876年に米国聖書会社,英国聖書会社が横浜に各支社を置いてからの長い歴史の中で集められた多くの貴重な聖書が保存されていた。日本聖書協会は,これらをできるだけ一般の人々に開放し,聖書の成立,翻訳の歴史,世界の聖書などに興味を持ってもらい,自由に閲覧してもらうために整備し,1980年3月に東京都中央区銀座の聖書館ビル7階に聖書図書館を開館した。

 当館では,閉館の時点で,聖書の原典であるヘブライ語・ギリシア語聖書の写本をはじめ,アラム語,シリア語,コプト語,ラテン語などの古代語の翻訳から,現代のドイツ語,英語などの主要言語や,アフリカや南方諸島の部族語の翻訳にいたるまで,世界中の535種の言語の聖書約5,400冊を所蔵している。中でも日本語訳聖書は現存する最古のもの(1837年発行ギュツラフ訳『約翰福音之傳』)から現代語訳まで網羅している。また聖書に関する辞書,コンコルダンス(聖書語句索引),研究書など約1,800冊を揃えている。

 当館は,開館以来,聖書の研究や,言語や翻訳などの研究に利用され,聖書に関する年間約450件のレファレンスに応じ,聖書の専門家による聖書セミナー・特別講演会を開催するなど,多くの方に認知された。また,来館者に日本聖書協会の活動内容を伝え理解を深めてもらう場所でもあった。

 紹介状無しでも来館・閲覧が可能であり,専門家をはじめ,関心を持つ一般の人々にも利用された。館内での閲覧が利用の原則だが,学校,教会,団体が主催する聖書の企画展示への出品依頼には,蔵書の貸し出しをして協力した。

●これまでの活動

 毎年春と秋に聖書セミナーを行っていた。また,1990年10月にグリーンフィールド(Jonas C. Greenfield)氏(ヘブライ大学教授。肩書はいずれも当時),1991年10月にサフライ(Shmuel Safrai)氏(ヘブライ大学教授),1994年11月に関根正雄氏(日本学士院会員),2004年7月に秦剛平氏(多摩美術大学共通教育教授)と村岡崇光氏(ライデン大学名誉教授),2010年7月に池田裕氏(筑波大学名誉教授)と木部徹氏(株式会社資料保存器材代表取締役社長),2011年8月に村岡崇光氏(ライデン大学名誉教授)を招き,特別講演会も行った。

 特別展としては,1983年10月にルター生誕500年記念「マルチン・ルターと宗教改革」,1988年3月から4月に『聖書 新共同訳』記念「聖書の版木展」,1995年12月に「聖書の写本展」,1998年4月に「中世の装飾聖書」,2015年10月から11月に「ルター訳聖書と宗教改革」を行った。

●閉館の経緯

 青山学院大学では2020年以降に新図書館建設計画があり,その新設される図書館に日本聖書協会聖書図書館旧蔵聖書としてまとめて置いてもらうこととなった。また,聖書とその翻訳の歴史をわかりやすく説明するより親しみやすい場所として,日本聖書協会が聖書図書館の跡に新たに聖書展示室を設置することになった。それらの準備等のため,2017年6月末の閉館となった。

●今後について

 日本聖書協会は,聖書を翻訳・出版し,み言葉を人々に届けることを目的としていることから,当館が所蔵する聖書は,日本聖書協会の聖書翻訳事業,聖書展示室,青山学院大学での利用のために整備を進める。青山学院大学に寄贈する聖書は新図書館完成まで,同大相模原キャンパス内の万代記念図書館に置かれ公開される予定である。

 また,2017年9月12日から9月17日まで,日本基督教団銀座教会東京福音会センターにおいて宗教改革500年記念展示会およびレクチャーを行う。死海文書,グーテンベルク聖書,ルター訳聖書,ギュツラフ訳『約翰福音之傳』,ベッテルハイム訳琉球語聖書等を展示する。ぜひおいでいただきたい。

一般財団法人日本聖書協会聖書図書館・高橋祐子

Ref:
http://www.bible.or.jp/library.html
http://www.bible.or.jp/contents/soc/pdf/vol117.pdf
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I9518045-00