カレントアウェアネス-E
No.313 2016.10.20
E1851
Code4Lib JAPANカンファレンス2016,大阪にて開催<報告>
2016年9月10日から11日にかけて,大阪府立労働センター(エル・おおさか)にてCode4Lib JAPANカンファレンス2016が開催された。同カンファレンスは今回で4度目の開催となる(E1721ほか参照)。4度目の開催となる今回は73名が参加し,基調講演1件,ロング発表5件,ショート発表10件,ライトニングトーク11件が行われた。本稿では,筆者が関心を抱いた発表をテーマごとにまとめて紹介することで報告したい。
基調講演は木達一仁氏(株式会社ミツエーリンクス)から「Webアクセシビリティのこれまでとこれから」という題目で発表が行われた。Webアクセシビリティとは,Webコンテンツに支障なくアクセスできるかを示す度合いであり,障害者や高齢者に対応したウェブサービスを設計する上で重要な概念である。2016年4月に施行された「障害者差別解消法」においてWebアクセシビリティへの対応が公共機関に義務づけられたことから,図書館でもWebアクセシビリティ向上への取り組みが不可欠となった。講演では,Webアクセシビリティに対応するためのガイドラインなどについて紹介がなされた。基調講演に続いて「アクセシビリティ」のセッションが行われた。安藤一博氏(国立国会図書館)は,プリントディスアビリティのある人のために資料をテキストデータ化する際の課題について発表した。また,阿児雄之氏(東京工業大学博物館)は,図書館フロアマップにおけるピクトグラム(何らかの情報や注意を示すために表示される視覚記号)の使用状況の調査について発表した。
図書館情報システムに関する技術・製品のロング発表も行われた。古永誠氏(EBSCO International Inc., Japan)は,同社がイニシアティブをとるオープンソースの図書館サービスプラットフォーム(LSP)の開発プロジェクト“FOLIO”について紹介した。また,吉本龍司氏(株式会社カーリル)は,同社がリリースした,横断検索を高速に実装するためのAPIである“カーリル Unitrad API”を紹介した。そのほか,ライトニングトークでは高久雅生氏(筑波大学)による文献レビュー支援ツール“LitCurate”,野澤拓也氏(Code for IKOMA)による絵本推薦アプリ“なによも?”等のウェブサービスに関する発表もなされた。
図書館員などによる技術実践事例も発表された。安東正玄氏(立命館大学)は,図書館の蔵書点検や持ち出し防止の対策方法として,蔵書に貼り付けたバーコードとRFIDタグをハイブリッドで運用する方法について紹介し,従来の磁気テープなどを使用した手法と比較したときの有用性などを発表した。また,吉川次郎氏(筑波大学)による,DOIの概要と技術的な課題などをわかり易く紹介した発表も行われた。
技術の実装に着目した発表だけではなく,調査の結果を紹介した発表もみられた。岡本真氏(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)による都道府県立図書館における年報のウェブ公開状況の発表や,筆者(ビブリオバトル普及委員会)による全国のビブリオバトル開催状況の統計分析を紹介した発表などがあった。
技術そのものより人間の活動に焦点をあてた発表として,複数人によるプロジェクトをどう維持していくかに着目した発表も行われた。例えば,江草由佳氏(国立教育政策研究所)は同氏が開催するFRBR&RDA勉強会の経験を通した勉強会の運営手法について発表した。また,筆者及び吉川次郎氏(Project LIE)は,今年配信が300回を超えたオンライン配信番組「図書館情報学チャンネル」が,どのような工夫によって継続されているか,そのノウハウについて紹介した。
筆者の感想としては,Code4Lib JAPANカンファレンスが図書館関係者の取り組みの情報共有の場として成熟してきていることが感じられた。その理由としては,去年のカンファレンスで発表された取り組みの進捗報告も目立ったからである。例えば,京都の図書館員による自己学習グループ「ししょまろはん」の発表は例年実施されており,今回は,「本に出てくる京都のおいしいもの」のLinked Open Data(LOD)である「たべまろはん」を紹介する発表が行われた。
今後,Code4Lib JAPANがカンファレンスの開催を通して,図書館関係者の様々な技術実践を継続的に支援し,国内における図書館業界のイノベーションを生み出す場となることを期待したい。
なお,講演ならびに発表の映像はYouTubeで公開されているほか,当日の模様を実況したツイートのまとめが公開されている。
日本貿易振興機構アジア経済研究所・常川真央
Ref:
http://www.code4lib.jp/
http://wiki.code4lib.jp/wiki/C4ljp2016
http://wiki.code4lib.jp/wiki/C4ljp2016/program
https://www.facebook.com/events/1619923901666257/
http://togetter.com/li/1022678
https://www.mitsue.co.jp/knowledge/blog/a11y/201609/13_1927.html
https://speakerdeck.com/ta_niiyan/code4lib-japan-2016-conference
http://www.ebsco.co.jp/news/PressRelease-FOLIO-June16-Jp.pdf
http://slides.com/ryuuji_y/deck-4
http://www.slideshare.net/tmasao/20160910-lit-curate
http://www.slideshare.net/TakuyaNozu/20160911-code4lib
https://drive.google.com/file/d/0B-OBLyVJQxeKbHdrck01a09JRTQ/view?usp=sharing
https://speakerdeck.com/corgies/20160911code4lib-japankanhuarensu2016-doiru-men
http://www.slideshare.net/arg_editor/20160910-code4-lib-japan2016
http://www.slideshare.net/kunimiya/ss-65899580
http://www.slideshare.net/yegusa/20160911c4ljp2016
https://drive.google.com/open?id=0BwulsP-dYpT-T1hkTFg4NkpyOVk
http://www.slideshare.net/kumikokorezumi/ss-65881674
http://libmaro.kyoto.jp/?p=460
http://linkdata.org/work/rdf1s4553i
E1721
E1486