E1721 – Code4Lib JAPANカンファレンス2015,東京にて開催<報告>

カレントアウェアネス-E

No.290 2015.10.15

 

 E1721

Code4Lib JAPANカンファレンス2015,東京にて開催<報告>

 

 2015年9月5日から6日にかけて,リクルート本社アカデミーホールにてCode4Lib JAPANカンファレンス2015が開催された。同カンファレンスは,「図書館と技術,Web,ITをむすぶ,図書館員や技術者,その他すべての関係者が集い,アイデアやツールを紹介しあい,先進的な試みを共有し,関係者が出会い,つながるイベント」である(E1486参照)。3度目の開催となる今回は91名が参加し,基調講演1件,通常発表10件,ライトニングトーク21件が行われた。本稿では,今回初めて参加し,発表を行った筆者の視点から,当日の様子および印象に残ったことを中心に報告したい。

 基調講演は,小林龍生氏(有限会社スコレックス)による「未来の書物への夢想またはもうひとつのハイパーテキスト論」であった。出版社での編集者としての経験をはじめ,ハイパーテキストの登場,今日の電子書籍に至るまで様々な要素について概観しながら,「本を本として成り立たせる要素とは何か」について洞察する講演であった。

 通常発表は,図書館システムやサービスの開発に関する報告やデモンストレーション,国立国会図書館(NDL)と日本図書館協会による日本十進分類法(NDC)のLinked Data形式化の試みの紹介,Wikipediaを介してまちと図書館をつなぐ「ウィキペディアタウン」(CA1847参照)の紹介,新たな機関リポジトリ分析システムの提案,大学図書館での利用者行動調査など,多岐にわたる発表が行われた。これらの通常発表のなかでも,とりわけ多くの注目を集め,繰り返し言及されたトピックはNDCのLinked Data形式化であった。1日目の福山樹里氏(NDL)の発表「NDCのLinked Data,あなたならどう使う?」のなかで,本イベントにあわせてNDC Linked Dataの中間報告版を試験公開する旨の告知が行われた。更にその翌日,2日目の通常発表において,常川真央氏(日本貿易振興機構アジア経済研究所)の「ビブリオバトルLOD:ビブリオバトルイベント情報と書誌情報のリンキング」にてNDC Linked Dataをウェブサービスに活用する実践例が早々に示されたことは,NDC Linked Dataへの需要と期待を感じさせられる事例であった。

 ライトニングトークについては,1日目は,丸山高弘氏(山中湖情報創造館)の発表として,同館の指定管理者スタッフであるヒューマノイド型ロボット・「ペッパー」(Pepper)によるトークが行われたこと,大向一輝氏(国立情報学研究所)の発表「第3のCiNii,そして…」において,日本の博士論文を検索できるサービスであるCiNii Dissertations(E1697参照)に次ぐ第4のCiNiiの名称が“CiNii R”となることが宣言されたことが印象深かった。2日目は,江草由佳氏(国立教育政策研究所)の発表「コードを一行も書かないでオープンソースプロジェクトに貢献する方法 — オープンソース図書館システム Next-L Enju の経験から –」において,オープンソースプロジェクトは気軽に参加可能であり,コードを書くこと以外の貢献として,マニュアルの作成や動作確認の作業が非常に重要であることが具体的な事例を踏まえて示された。そのほか,オープンソース図書館システム“SLiMS”の開発者であるArie Nugraha氏がインドネシアから来日参加されたこと,同氏によって1日目に紹介された図書館システムについて,吉本龍司氏(株式会社カーリル)が,カーリルの,配架図に関する「haikaプロジェクト」と連携可能であることを示したことなどが印象に残った。

 本カンファレンスは,オープンな雰囲気のもと,いわゆるGeekと呼ばれるような情報技術に明るい人だけでなく,図書館にかかわる幅広い分野,属性の人々が交流でき,親睦を深められる場であると感じた。また,参加者が肩書や守備範囲とは関係なく和気藹々とする様子を見て,このような場での交流や情報交換が,長期的な目で見ると,技術畑寄りの人々と,あまり技術に明るくない人々がお互いのことを徐々に理解し,協働することに繋がるのではないかと感じた。もし,Code4Lib JAPANカンファレンスに興味はあるものの一歩を踏み出すのが難しい,という人がいれば,恐れずに来年のカンファレンスに参加されることをおすすめしたい。

 なお,今年の講演や発表の映像はYouTubeで公開されているほか,当日の模様を実況したツイートのまとめなどが公開されている。

筑波大学大学院図書館情報メディア研究科・吉川次郎

Ref:
http://www.code4lib.jp/
http://wiki.code4lib.jp/wiki/C4ljp2015
https://www.facebook.com/events/752611648189572/
http://togetter.com/li/869786
http://togetter.com/li/870210
https://www.youtube.com/user/code4libjapan/videos
http://www.jla.or.jp/committees/bunrui/tabid/578/Default.aspx
http://www.kanzaki.com/works/2015/ndc-ld/
https://www.youtube.com/watch?v=0hKPhnvJJkA
http://www.next-l.jp/
http://slims.web.id/
https://haika.io/
E1486
E1697
CA1847
CA1629