E1720 – ウェブサイト・「佛教大学図書館施設ガイド」の構築と公開

カレントアウェアネス-E

No.290 2015.10.15

 

 E1720

ウェブサイト・「佛教大学図書館施設ガイド」の構築と公開

 

 佛教大学図書館(以下当館)では,2015年7月1日に「佛教大学図書館施設ガイド」(以下「施設ガイド」)と称するウェブサイトを公開した。「施設ガイド」では,当館内の施設を視覚的に理解できるように,360度のパノラマ画像を用いたバーチャルツアーを提供しているほか,さまざまな当館の機能について,施設画像を通じて理解を深めていけるような工夫を行っている。ここでは「施設ガイド」を構築するに至った背景と構築の過程について,報告しておきたい。

 当館の利用者には,多くの大学図書館とは異なる特色がある。それは遠隔地に居住する通信教育課程に属する学生が多数存在するという点である。これらの利用者が,平時に当館を訪れる機会はさほど多くない。しかし,スクーリングが開講されている時期には,学術情報の収集やレポートの執筆を目的として,これら利用者の来館は著しく増加する傾向にある。実際のところ,こういった利用者が,わずかな滞在時間で当館の機能を理解し,かつ活用できるようになるのは相当に難しい。それゆえ当館としては,利用者が当館の基本的なサービスや施設及び機能について,事前に一定程度習熟,理解できるような仕組みを提供したいと考えるに至った。こうした目的をふまえ,誕生したウェブサイトが「施設ガイド」である。

 なお当館では,システムやウェブサービスの設計や開発は,欧米の図書館に倣い,できるだけ図書館内で行うことを旨としている。このため図書館内には,これらの業務を担うセクションが存在しており,システムライブラリアンとして,図書館内のエンジニア業務を担っている筆者と,ウェブデザイナーである三好夏美の二人が所属している。セクション内においては,それぞれの専門分野が異なることから,業務内容は明確に区分されており,多くの場合,システムや基本コンセプトなどの設計に関しては筆者が担当し,その後のデザイン設計と実装に関しては,三好が全面的に担う体制となっている。

 「施設ガイド」に関して,筆者が設計段階で想定していた基本コンセプトは,次の3点であった。すなわち,(a)図書館内の施設や備品の更新に速やかに対応できるなど,コンテンツマネジメントに秀でたものとすること,(b)施設や備品の情報について,視覚的なインパクトに優れた「見せ方」を通して提供できること,そして(c)マルチデバイスによるアクセスを前提とした設計であること,である。

 基本コンセプトの具現化にあたっては,おおむね以下のような方策がとられた。まず(a)に関しては,オープンソースのCMSとして,当館で長年利用実績のあるWordPressをプラットフォームとして採用することで,施設や設備に変化が生じても,ソースコードをさほど変更することなく修正対応できるような環境を整えた。

 続く(b)についてはパノラマ画像を用いた,図書館を広報する上での新しい情報の「見せ方」を模索した。具体的には,(1)Googleがスマートフォンやタブレット向けに提供しているアプリPhoto Sphere Camera(現:「ストリートビュー」)を用いて図書館内各所のパノラマ画像を撮影。その後,(2)Photoshopを用いて撮影画像を編集した上で,(3)Googleマップに当館のインドア画像として登録し,画像同士をリンク,(4)「施設ガイド」からは,Google Maps APIを用いて,フロアマップと同一の画面でインドアビューを展開する,という形で,図書館内にいるかのような臨場感を現出しつつ,施設利用について理解できるようなバーチャルツアー機能を実装した。

 一方,(c)については,レスポンシブデザインのページ設計を行った上で,スマートフォンやタブレットでのアクセスを念頭においたサイト構成を実現させた。すなわち,スマートフォンやタブレットによるサイトアクセスでは,クリック(タップ)よりもスクロールが好まれることから,サイトの階層をできる限りフラットにし,直感的に操作できるデザインを適用した。

 実際のところ,「施設ガイド」に対する利用者の反応に関しては,公開から間もないこともあり,未だ不分明な部分も多い。とはいえ,今後も機能拡張などを通じて,継続的に利便性の向上を図ることは必須であろう。現在は「館外」での利用を前提とした「施設ガイド」であるが,「館内」での利用も十分に想定される。たとえばAR(拡張現実)を用いた設備案内の実装なども積極的に検討していくべきであろう。

佛教大学図書館・飯野勝則

Ref:
http://bird.bukkyo-u.ac.jp/guide/
https://wordpress.org/
https://www.google.co.jp/intl/ja/maps/about/contribute/photosphere/
https://itunes.apple.com/jp/app/google-sutoritobyu/id904418768/
https://developers.google.com/maps/