E1571 – ニュージーランド国立図書館,利用及び再利用の方針を公表

カレントアウェアネス-E

No.260 2014.06.05

 

E1571

ニュージーランド国立図書館,利用及び再利用の方針を公表

 

 ニュージーランド国立図書館(NLNZ)が,2014年3月12日承認の,所蔵資料の利用及び再利用についての新方針を発表した。“Policy for Use and Reuse of Collection Items”と題する同方針は,ニュージーランド人による同館所蔵資料の利用・再利用を,明確な枠組みの中で,容易に行うことができるようにすることを目的とするものであり,9つの原則が示されている。なお,同方針における所蔵資料の利用・再利用とは,個人的,社会的,教育的,商業的な利用を目的とする,あらゆる手段での使用と定義されている。また,所蔵資料とは,研究者がアクセス可能なあらゆる同館所蔵の資料を意味し,ここにはボーンデジタルのコンテンツ,NLNZによりデジタル化された物理的なコンテンツ,研究者によりデジタルカメラで撮影された物理的なコンテンツを含むものとされている。また研究者とは,情報ニーズを満たすためにNLNZの資料を活用する者とされ,いわゆる利用者と同義である。

 同方針で示されている9つの原則は以下のような内容となっている。

 原則1は,NLNZの所蔵資料の利用・再利用を支援するサービスは法律を順守する,としている。同方針に従ったNLNZの活動やサービスは,著作権法(1994)等に適合するものであることを示している。

 原則2は,すべての所蔵資料は,明確で一貫した利用・再利用の権利及び許諾の明示とともに研究者に提供される,としている。これは,利用・再利用に関する情報が存在しなかったり,紛らわしかったり,資料と結び付けられない形で示されている場合には,誤った利用という事態,あるいは利用されないという事態が増えるとの認識に基づき,それを避けるために示されたものである。

 原則3は,NLNZが,所蔵資料の受入れ時に同意した利用・再利用についての諸条件や制約を忠実に守ることを宣言している。ここでは,刊行された資料,刊行されていない資料のいずれについても,利用・再利用の条件等は,権利所有者により,あるいは,受入れの際に,決定されるものであるとの認識が示されている。

 原則4は,権利所有者及び寄贈者との交渉においては,著作権保護下にある作品の利用・再利用について,クリエイティブ・コモンズ(E1516参照)のライセンシングの枠組みを奨励し,またこれをもって通知することを謳っている。これは,利用・再利用に関する情報の明示を,より国際的に認知された枠組みを用いて行っていくことを宣言したものである。

 原則5は,適用される著作権の制約がない場合には,NLNZは,その資料に関する文化的・倫理的問題について注意深く検討した上で,その資料を“no known copyright restrictions”(知られている限りの著作権の制約はない)と明記して利用・再利用に提供するよう努める,としている。これは,著作権切れの資料の利用・再利用について,可能な限り“permissions barrier”(許諾の障害)を除去することを意図して示されたものであり,NZGOAL(New Zealand Government Open Access and Licensing framework)を適応したものである(下記原則8参照)。

 原則6は,著作権が適用される場合であっても,権利所有者が特定できない,あるいは追跡できない作品がある場合には,NLNZは,その資料に関する文化的・倫理的問題について注意深く検討した上で,“copyright undetermined – untraced rights owner”(著作権は,特定できない,あるいは追跡できない権利所有者にある)と明記して提供するよう努める,としている。いわゆる孤児著作物について,NLNZは,必要な調査の実施等のプロセスを経て初めて利用・再利用を可能にすることができることを示したものである。

 原則7は,“no known copyright restrictions”(知られている限りの著作権の制約はない)とされた所蔵資料は,利用・再利用のために,高画質で利用できるようにされるべきである,としている。これは,所蔵資料を低画質でしか利用できないことは,利用・再利用を制限するものであるとの認識を持ち,解像度に伴う利用の障害を除去することに努めることを示したものである。

 原則8は,NLNZが権利所有者である所蔵資料には,NZGOALの原則が適用される,としている。NZGOALは,政府機関が著作権を保有する資料と,著作権保護対象外の資料について,それぞれが有効的に再利用されるよう定められた指針であり,政府の資料についてクリエイティブ・コモンズの枠組みが推奨されている。

 原則9は,所蔵資料の公共の利用・再利用のための適切な属性が提供されることが必要であり,それによりその資料の信頼できる情報源に遡ることができるようにする,としている。NLNZでは可能な限り,“preferred citation”(推奨される引用形式)を提供することにより支援するとしている。

 NLNZの公式ブログに,同方針の公開について紹介した記事が掲載されている。ここでは,同館がデジタル化により資料をオンラインでアクセス可能にしてきたことが言及され,アクセスがすでに可能であることを前提として今回の方針がまとめられたと説明されている。確かにアクセスと利用・再利用は別の概念であり,アクセスが保障されただけでは、様々な利用・再利用が必ずしも十分に行われるようになるものではないだろう。図書館によるデジタル化が進む中,同方針は,国立図書館が利用・再利用について包括的な方針を提示した例として,注目される。

関西館図書館協力課・依田紀久

Ref:
http://natlib.govt.nz/blog/posts/our-new-use-and-reuse-policy
http://natlib.govt.nz/about-us/strategy-and-policy/collection-use-and-reuse-policy
http://natlib.govt.nz/files/strategy/Use-and-reuse-policy.pdf
http://www.nsla.org.au/publication/position-statement-public-domain-works
http://ict.govt.nz/guidance-and-resources/open-government/nzgoal
https://natlib.govt.nz/collections/a-z/alexander-turnbull-library-collections
E1516