E1516 – CCライセンスが6年振りに改定,4.0版に

カレントアウェアネス-E

No.251 2013.12.26

 

 E1516

CCライセンスが6年振りに改定,4.0版に

 

 2013年11月25日,クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)の4.0版が公表された。2007年2月の3.0版の公表以来,6年振りの改定となる。本稿では,その概要について紹介する。

 CCライセンスとは,2001年に創設された米国の非営利団体であるクリエイティブ・コモンズが,著作物の円滑な利用を促進するため,2002年12月に策定したライセンス形式であり,著作権者がその著作物に関して限定された権利のみを主張する(Some rights reserved)旨を表示するものである。

 CCライセンスでは,「表示(BY)=作品のクレジットを表示すること」,「非営利(NC)=営利目的での利用をしないこと」,「改変禁止(ND)=元の作品を改変しないこと」および「継承(SA)=元の作品と同じ組み合わせのCCライセンスで公開すること」の4つの条件の組み合わせにより,6種類の利用許諾の基本的な方式を作り出すことが可能となっている。この仕組みにより,著作権者は,自らの著作物につき,自らが希望する形で著作物の流通と著作権の保護の調和を図ることができる。

 また,CCライセンスは,ライセンスの主旨について法律家でない人でもわかるような表現でまとめた「コモンズ証」,法律家が読むことを念頭に法的に厳密な形で記述された「利用許諾(ライセンス)」および検索エンジンやプログラム上でライセンス方式が識別可能となるようにRDF構文に基づき記述された「メタデータ」の3つの要素を持ち,それぞれライセンス誤用防止,法的実効性の確保及びCCライセンスのオンライン上での利用促進についての配慮を行っているとのことである。

 CCライセンスについては,これまで,複数国をまたがった利用の場合に各国の版の関係が不明確との問題や,CC-NCの場合の「営利」の範囲が不明確との問題,著作権以外の権利との関係が不明確との問題等が指摘されていたことから,2年以上前からその改訂が検討されていた。4.0版は,この検討の成果に基づき策定されたものであり,具体的には,次の項目について改善したとのことである。なお,「営利」の範囲の不明確さの解消については,4.0版では対応されず,今後の課題となった。

●全世界で共通化
 これまで,各国のボランティアが,標準となるCCライセンスを元に,それぞれの国の著作権法に合わせた形でCCライセンスを策定しており(日本版は現在のところ2.1版が最新版である),その数は60を超えているという。このため,国をまたいだ利用の場合,それぞれの国のCCライセンス相互の関係が不明確となっていた。

 そこで,4.0版の策定にあたり,各国の関係団体や専門家等と連携を行うことで,国をまたいだ利用が可能な版となるようにしたとのことである。これにより,各国版への置き換えが不要となり,全世界で同じ版をもとにライセンスを発行することが可能となった。現在,4.0版は英語でしか提供されていないが,今後,各国語に翻訳する「公定訳」を作成するとのことである。なお,どの版のCCライセンスを選択するかは自由であり,4.0版の策定によって例えば現在の日本版の2.1版を使えなくなるわけではない。

●著作権法以外の関連法規とライセンスの関係を明確化
 コンテンツを利用する場合,肖像権,パブリシティ権,プライバシー権や,EUで法定されている創作性のないデータベースの権利(Sui Generis Database Rights)(CA1155参照)といった,著作権法を根拠としない権利が関係してくることがある。また,著作者人格権では,コンテンツを改変されない権利である同一性保持権も関係してくる場合もある。これまでのCCライセンスでは,これらの権利との関係が不明確であった。

 そこで4.0版では,創作性のないデータベースの権利についてはCCライセンスの効力が及ぶこと,また,それ以外の権利については,原則としてCCライセンスの効力が及ばないことを明文に規定することで,これらの関係を明確化した。

●ウェブ上の慣習に沿った著作権表示の許容
 これまでは,コンテンツを利用しようとする場合には,著作物の題号等を表示しなければならなかった。4.0版では,ウェブ上の慣習に従い,このコンテンツに関する情報が掲載されているウェブページのリンクを表示すれば足りることとした。

●原著作者名の非表示要求を認める範囲の拡大
 これまでは,二次創作物の場合にしか認められなかった,原著作者がその氏名をコンテンツに表示しないことの要求につき,単なる複製の場合にも認めることとした。

●違法状態の解消による効力の継続措置の導入
 これまでは,CCライセンスに規定される利用許諾条項に反した場合,その効力が失われることになっていた。4.0版では,無条件に効力を失わせるのではなく,発見してから30日以内に違法状態を解消すれば,効力が継続することとした。

 このほか,文言や構成の見直しによる理解しやすさの向上,二次創作物の場合において適用されるCCライセンスが不明確であることの解消を行ったという。このような取り組みによって,著作物の円滑な利用が一層広がることを期待したい。

関西館図書館協力課・南亮一

Ref:
http://creativecommons.org/weblog/entry/7249
http://creativecommons.org/weblog/entry/40768
https://creativecommons.org/version4
http://wiki.creativecommons.org/Frequently_Asked_Questions
http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/legalcode
http://news.mynavi.jp/news/2013/11/29/054/
http://johokanri.jp/stiupdates/property/2012/08/007605.html
http://fudandukai.com/loftwork_hayashi/vol_05.html
http://ume108.blogspot.jp/2013/03/blog-post.html
http://trpg-labo.com/blog/967
CA1155