カレントアウェアネス-E
No.250 2013.12.12
E1510
図書館探索型行事「ミステリークエスト」活動報告
2013年10月27日,東京都の江戸川区立東部図書館で『ミステリークエスト~東部図書館からの脱出~』と銘打った行事を行った。中学生を中心に,募集上限となる20人に参加してもらうことができ,『東京図書館制覇!』のブログ等でも紹介されるなど,好評を博する結果となった。
本行事は,利用者にもっと図書館のことを知ってもらいたい,中高生の利用を増やしたい,という考えから計画された。また,企画を立てるに当たり,株式会社SCRAPと書泉グランデが実施した『本屋迷宮からの脱出』という,営業中の書店内で行う参加型のゲームイベントを参考にしている。
ミステリークエストは図書館を舞台にした謎解きゲームである。本行事では3つの謎を用意した。謎解き開始直後はひとつ目の謎だけ提示し,解くごとに次の謎へと導く手順をとった。図書館に仕掛けられた謎と,それを解くためのヒントは事前に冊子の形で用意・配布しておき,ひとつ謎を解くごとに次の謎が書かれたページを渡していく形とした。行事時間60分のうち,最初の説明に10分,謎解きの時間を45分,最後の5分を解説時間と割り振り,謎解き開始から15分後,30分後,40分後にそれぞれ1,2,3番目の謎に対応するヒントを追加で提示した。
最初の謎は館内に撒かれたキーワードを探してもらうという内容だ。キーワードはひらがなを一文字ずつ,すべて別置記号が付く書架に配置した。文字と別置記号はリンクしており,参加者は見つけた文字を,別置記号のアルファベット順に並べかえることで,正解が導き出せるようになっている。この謎は参加者が実際に図書館内をくまなく歩き回ることで,普段では行かないような場所にどのような資料があるのか知ってもらうことを目的としている。
次の謎では暗号を提示し,その暗号から導き出される資料を探すという内容とした。暗号は「総記」や「社会科学」などの日本十進分類法(NDC)の類目名を対応する記号である「0」や「3」に置き換えたり,「一般」,「児童」などを意味するバーコードの数字に変換することで,ある資料の背ラベルを示すようになっている。NDCの類目表やバーコードの数字の意味などは,あらかじめ配布した冊子にヒントとして記載した。この謎では,図書館資料のラベルに貼られている数字が何を示しているのかを知ってもらうことを目的とし,背ラベルのNDC番号やバーコードの読み方など,図書館資料の分類や配架の仕組みに興味を持ってもらえるよう作成した。
最後の謎では「これまでの謎をふまえ図書館から脱出せよ」とだけ提示した。ヒントとなるのは,配布した冊子の表紙である。その背ラベルに参考図書を示す表示をし,館外へ持ち出すことができないということに気付ければ謎が解ける。行事開始時に冊子を配布する際,「参考となる資料をお渡しいたします。この資料は,行事終了後に差し上げます」と,行事中は冊子を図書館の資料として扱うようそれとなく伝えたり,追加のヒントで「脱出できないのではなく,脱出してはいけない」などの言葉で参加者に考えてもらうよう促した。この謎では参考資料の特性を知ってもらうことに加えて,謎解きの満足度を高める目的もあって意識的に難易度を上げることにした。結果的に制限時間を多少過ぎてしまったが,最後は参加者全員がクリアすることに成功した。
参加者のアンケートでは「すごく難しかったけど、終わった後すごくスッキリして、頭もよくなったような感じになってすごく良かった」「案外むずかしくて困ったけれど、友達とひらめきと自分の行動で解くことができて楽しかったです」など,徐々に難しくなっていく謎を楽しんでもらえ,「図書館をくわしく知る機会になりました」との評価を受けた。また,勤務スタッフ全員に問題の答えやヒントを覚えてもらう必要があるなど,運営上の課題があり実現は難しいが,期間内にいつでも参加できるようにしてほしいという積極的な意見もあった。その意見を踏まえ今後新たに開催するならば,夏休み期間中に小学生を対象として,参考図書の使い方に焦点を当てた謎解きを作成し,自由研究の宿題や図書館を使った調べる学習コンクールなどへと繋げられればと考えている。
なお,行事中の様子を撮影した動画が江戸川区広報番組の「図書館ナウ!!ここがスゴいぞ!江戸川区の特色ある図書館」で公開されている。館内や参加者の雰囲気などが掴めるかと思われるので,どうぞ参考にしていただきたい。
江戸川区立東部図書館(株式会社VIAX)・中嶋雅人
Ref:
http://tokyo-toshokan.net/00000924.htm
http://realdgame.jp/event/book_vol1.html
http://www.toshokan.or.jp/contest/
http://www.news.city.edogawa.tokyo.jp/movie/movie1740.html