カレントアウェアネス-E
No.231 2013.02.07
E1396
調査研究「レファレンスサービスの課題と展望」中間報告会
2013年1月31日,国立国会図書館(NDL)が2012年度図書館及び図書館情報学に関する調査研究事業として実施している「日本の図書館におけるレファレンスサービスの課題と展望に関する調査研究」の中間報告会が行われた。会場のNDL東京本館と,テレビ中継を行った関西館を合わせて,約50名が参加した。
本年度の調査研究事業は,NDLが株式会社シィー・ディー・アイに委託し,小田光宏青山学院大学教授を研究主幹として実施しているものである。2011年度の調査研究では報告書「東日本大震災と図書館」を取りまとめた(E1283参照)が,この中で,情報サービスを行う機関として非常時において図書館ができることは何かを問い続ける必要性が指摘された。これを受け,本年度の調査は,情報サービス(レファレンスサービス)を取り上げ,その現状を確認し,平常時から取組むべき課題と今後の展望を考察することを目指している。
冒頭にNDL関西館図書館協力課の依田紀久が,上記目的等の説明を行った。続いて研究主幹の小田光宏氏は,この調査研究の背景として,質問回答サービスに限定されがちなレファレンスサービスを再定義する必要があること,生活の中で様々な情報や資料の探索が行われているにも関わらずそのような活動とレファレンスサービスとの関係が明確でないこと等の問題意識を説明した。その上で,この調査研究を主に基礎調査と発展調査から構成したことを示し,基礎調査では,現在の日本の図書館におけるレファレンスサービスの実態を明らかにするため全国の図書館を対象にした質問紙調査を行ったこと,発展調査では,国民のレファレンスサービスへの認識を明らかにするためボランティア活動や農林水産業の従事者等を対象にグループインタビューを行ったことを紹介した。
続いて,シィー・ディー・アイより,今回の質問紙調査は,設問数が63問ある大部なものであるにも関わらず,全国3,910館から回答を得ており,調査結果は膨大なデータセットとなっていることが報告された。その上で研究会メンバーから,分析結果について紹介がなされた。筑波大学大学院准教授の辻慶太氏は,(1)レファレンスサービスとはどのようなものと図書館に認識されているか?(2)どのようなサービス・活動を実施するとレファレンス質問の受付件数が伸びるか?の2つの問題意識に基づいて,相関分析の結果を紹介した。さらに,館種別クロス集計結果として,北陸学院大学短期大学部准教授の間部豊氏が公共図書館の概況について,九州大学附属図書館eリソース室長の渡邊由紀子氏は大学・専門図書館の概況について,それぞれ紹介した。
最後に,質疑応答・意見交換が行われた。参加者からは,都道府県別等,自治体の種別ごとの分析への期待が寄せられた。これに対し,研究会からは最終報告に向けて可能な範囲で取組むこと,またデータを公開することを前提に行っていることが説明された。また,意見交換の中では,各図書館のレファレンスサービスに関する課題が出てくることになるので,そこから解釈し,方策を検討していくことが望まれる,との考えが示された。
この調査研究では,今後報告書のとりまとめを行い,3月21日には,最終報告会を開催する予定となっている。これらにおいては,レファレンスサービスの領域における図書館の“業務コア”のうちどの部分が発展し得るのか,図書館員の“技能コア”のうち発展すべき点があるのか,図書館と人々との関係性についてどのような課題があるのか,等の考察が行われる予定となっている。最終報告会には,今回の調査研究から提供される素材を議論する場として,図書館員,図書館情報学者等,多くの方にご参加いただきたい。
(ご案内)
最終報告会は,2013年3月21日午後1時半から5時半まで国立国会図書館関西館(京都)で開催します。同日午前中には,歴史的音源をテーマとした研修会,翌22日には,レファレンス協同データベース事業第9回参加館フォーラムを開催します。なお両日とも小展示「花ひらく少女歌劇の世界」が行われています。この機会にぜひ関西館まで足をお運びください。
(関西館図書館協力課)
Ref:
http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20130131/1359632436
http://current.ndl.go.jp/node/22844
http://www.ndl.go.jp/jp/event/exhibitions/1199016_1376.html
E1283