カレントアウェアネス-E
No.220 2012.08.09
E1320
情報発信活動インタビュー(3)笠間書院 kasamashoin ONLINE
インターネット上で積極的な情報収集・発信活動を行っている方々に対する連続インタビュー企画(E1308,E1314参照),第3回目となる今回は,笠間書院編集部の岡田圭介さんにブログ「笠間書院 kasamashoin ONLINE」などの活動についてお話を伺った。
●活動の概要について教えてください。
笠間書院は日本語・日本文学の研究書を主として刊行している出版社です。自社の公式サイトでもあるブログ「笠間書院 kasamashoin ONLINE」を中心に,日本語・日本文学の研究者に向けて情報発信を行っています。2006年のウェブサイトのリニューアルを機に,現在のような活動を行うに至りました。その当時の考えは「学術出版社とインターネット」という小文を書いたのでそちらをご覧頂きたいです。要点は,自らの専門領域に対して責任を果たしたいということでした。現在もその時点から考えはあまり変わりません。
●情報収集・発信の方法について教えてください。
ブログを始めたのは,小社の出版ジャンルである日本語・日本文学研究の世界の輪郭を提示したいということでした。どんな学会がいつ開かれるとか,こんな新発見を誰それがしたとか,こんな求人があるとか。最初は私1人でやっていたのですが,現在は1人加わって2名でやってます。
情報収集は,はてなアンテナやRSSリーダーでサイト更新をチェックする他,会社宛に送られてくるメールや郵便物などもニュースソースにします。大事だなと思ったことを記事にしています。仕事をしている中で,原稿を読んだり,学会誌を見たりということは日常的に行っているので,判断基準はそういったことから得られているものとしか言いようがないのですが,それはつまりマニュアル化できない部分なんだろうと思います。
情報発信は,ブログに加え,Twitter,メールマガジン,はてなアンテナ(笠間書院のアンテナ1~6),Googleカレンダーを通して行っています。ブログは自社の公式サイトでもあるので,研究者に知って欲しい情報は必ずここに掲載するようにしています。
Twitterは難しくて,始めた当初はブログの更新情報をただ流すだけでした。Twitterがブレイクし始めた頃「個性も出さないとつまらない」という思い込みから迷走したのですが(聴いてる音楽を呟くとか(笑)),今は研究者に関係がありそうなネット上の記事などから気になるものを呟いています。運用方針を決めたことで,継続出来るようになりました。
メールマガジンは,毎日ブログを見るのが面倒な人向けのサービスと位置づけています。ブログの更新情報を月2回まとめて配信しています。
はてなアンテナでは,ブログの更新情報の元ネタとなる情報を集約しています。アンテナを公開しているのは実はサイトを見てることをそのサイト運営者に知って欲しいから。
Googleカレンダーには学会・講演会などのイベント情報を掲載しています。
●活動を通して得られたものや課題などについて教えてください。
ネット上で活動をすることで多くの繋がりが得られたことがまずは挙げられます。直接会わないと知り合いになれなかった人たちと知り合えたことは,何物にも代えがたいですし,ネット上での活動自体が名刺代わりになって,初対面の人とも前提を飛ばして本題を直接ぶつけ合えたりする。それはネットでアクティブに活動している人に共通の感覚なのではないかと思います。
あと課題ですか。沢山ありすぎて何を言おうか迷います(笑)。
笠間書院は出版社です。出版社の仕事は,おそらく大きく「情報発信」なんだろうと思います。ある情報を価値ある物として編集して提示するという。そういった意味で出版社はどの社も情報発信をしているわけです。小社が殊更特殊なことをやっているわけではありません。この活動の結果,出版企画につながることは増えているので,情報発信をしていることで,会社のプラスにはなりました。が,先に述べた「日本語・日本文学研究の世界の輪郭を提示」という部分では物足りなくなってきた部分もあります。
日本語・日本文学研究の世界をもっと豊かにしていくためには,もっといろんな言葉が必要です。そのための言葉をふんだんにブログに盛り込みたい。執筆依頼をして。でもどこでそのコストを回収するかといったら,現状はないわけです。本に出来るだけ大きな内容のものであれば,本を作ればいいんですが,もっと些細なことにも言葉を積み上げていきたい。それが大きな課題です。何かコストを回収する仕組みを作るか,雑誌などの媒体を立ち上げるか,とか。悩みは尽きません。
●情報の発信者に期待すること,伝えたいことはありますか?
あまり振りかぶって言うことはないんですが。情報は発信する者が様々に編集・加工して価値あるものにしなければ,流れません。加えて,ニーズの有無を考えることも必要です。が,実は情報発信者の本当の役割は,ニーズを作り出すことだと思います。
ニーズを作りだそうと思って作られたものは,とんでもなくいかがわしいものになったり,魅力的なものになったり,結果は様々です。情報を発信することで,自分達が直面している世界をどうしたいのか。そこへのメッセージのこそがニーズを作り出す原動力になる。それが無いものは読んでもつまらない。中立的であろうとするとは誇るべき事でも何でもないので,果敢にニーズを作り出すべくチャレンジして欲しいです。
また情報発信をする上でのヒントは,常に人にあると思います。答えに近いものはきっと誰かが持っています。それを探して提示するのが情報発信者だと思います。なので人材を活用するという目で周囲を見渡し,書いてもらったりやってもらう(笑)。書いていて気がつきましたが,それは出版社でいう編集者と同じですね。偉そうなことを書きましたが自分に言い聞かせながら書きました,もちろん(笑)。
●ご自身の読者に伝えたいことはありますか?
ブログ,Twitterとも情報過多なので,適当にスルーしながら見て下さい。あと,面白い情報があったら,いつでもご連絡ください。掲載いたします。お待ちしております。
(協力・笠間書院・岡田圭介さん)
Ref:
http://kasamashoin.jp/
http://kasamashoin.jp/2007/06/post_176.html
http://twitter.com/kasamashoin
http://www.mag2.com/m/0000222327.html
http://kasamashoin.jp/2007/08/post_203.html
http://a.hatena.ne.jp/kasamashoin/
http://a.hatena.ne.jp/kasamashoin2/
http://a.hatena.ne.jp/kasamashoin3/
http://a.hatena.ne.jp/kasamashoin4/
http://a.hatena.ne.jp/kasamashoin5/
http://a.hatena.ne.jp/kasamashoin6/
E1308
E1314