E1314 - 情報発信活動インタビュー(2)実業史研究情報センター

カレントアウェアネス-E

No.219 2012.07.26

 

 E1314

情報発信活動インタビュー(2)実業史研究情報センター

 

 インターネット上で図書館業界の情報を積極的に収集・発信している方々に対する連続インタビュー企画(E1308参照),第2回目となる今回は公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センターの茂原暢(しげはら・とおる)さんにお話を伺った。

●活動の概要について教えてください。

 公益財団法人渋沢栄一記念財団実業史研究情報センターは2003年11月に設置されました。活動の概要については『びぶろす』2007年10月号の記事をご覧ください。センターは閲覧のための施設を持たないので,渋沢栄一記念財団のウェブサイト,メールマガジン『ビジネス・アーカイブズ通信』,そして『実業史研究情報センター・ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」』など,主にインターネットを通じて情報を発信しています。

 ウェブサイトでは主に渋沢栄一,社史,企業史料に関する情報を,「渋沢栄一伝記資料目次」「渋沢栄一関連会社社名変遷図」「企業史料ディレクトリ」のような資源化した形で提供しています。また,2009年には国立情報学研究所連想情報学研究開発センターとの共同開発による「実業史錦絵絵引」を公開しました。

 2007年にテスト版の配信を開始したメールマガジンでは,アーカイブズ業務を通じて社会貢献をめざす企業・団体や,アーカイブズに関する知識とスキルを必要とする情報スペシャリストをターゲットとして,企業史料管理とビジネス・アーカイブズに関する海外情報をご紹介しています。

 ブログでは上記に関わる内容に加え,図書館・アーカイブズに関連する話題を,祝祭日を除く月曜日から金曜日に掲載しています。2011年3月13日からは,東日本大震災と復興に関わる文化資源についての情報や,センターが開発したリソースの中から災害・戦災や復興に関する情報も積極的に発信するよう努めています。

●情報収集・発信の方法について教えてください。

 ブログに掲載している情報のうち,図書館・アーカイブズ関連ニュースとしてまとめている情報は,主に下記のツールを使って収集しています。

  1. 検索エンジンのニュース・サイト(Googleニュース,Yahoo!ニュースなど)
  2. RSSリーダー(Googleリーダーなど)
  3. ウェブページの更新チェッカー(WWWCなど)
  4. TwitterやFacebookなどSNSで流れる情報
  5. 口コミ

 ニュースの収集は,他の業務の合間などに私一人で行っています。通常は朝・昼・晩の3回,博物館・美術館,図書館,文書館,公民館(MLAK)や(電子)書籍に関する情報を発信しているサイト,ネット関連のニュース・サイト,それから震災情報収集のために東北を中心とした新聞社や関係諸機関のサイトを巡回します。600ほどのサイトから必要と思われる情報をとりまとめ,センター長の内容確認を経た上でブログに掲載しています。

●活動を通して得られたものや課題などについて教えてください。

 センターで働く職員は,最初からインターネットやウェブの情報に精通していたわけではありません。ブログに情報をまとめたのは,自分たちのためでもありました。ブログに情報を集約したことで,いろいろな機関の多様な事例を,効率よく参照することが可能となりました。

 また,このような情報をブログに掲載することで,渋沢栄一や実業史とは縁の浅い方々に渋沢栄一記念財団の名前や活動を知っていただくきっかけにもなりました。もちろん,今回インタビューのオファーをいただけたのも「活動を通して得られたもの」に違いありません。

 一番印象深かったのは,「MLAKを中心とした震災関連情報」に掲載した内容から,実際の復興支援が動き出した例があることです。ブログの情報から救済されていない被災資料があることを知った資料保存の専門家が,助成事業に関する情報を利用してレスキュー作業を行い,後に,そのやり方は国立公文書館などでも採用されるに至ったと聞いています。

 今後の課題は「一日でも長くブログの更新を行うこと」,そして「どうなったらブログをやめるのか」という「状況を見極める目を養うこと」だと考えています。

●情報の発信者に期待すること,伝えたいことはありますか?

 どのような形でも,まずはインターネットを通じた情報発信を行っていただければと思います。その中から必要な情報を探し出すのが,我々ライブラリアンの仕事です。その際,情報を探しやすく,また参照しやすくするために以下に挙げる8つのことを実践していただけると助かります。

  1. 情報は検索エンジンが巡回できる場所に置く
  2. 文字情報は画像やFlashにせずテキストで掲載する
  3. PDFよりHTMLが望ましい
  4. ウェブページには掲載内容に即した短く的確なタイトルをつける
  5. ひとつの記事にひとつの固定URLをつける(パーマリンク)
  6. どうしても既存のURLを代える必要がある場合には,検索エンジンも理解できるように「301リダイレクト」を使って新しいURLに誘導する
  7. 掲載日,更新日を明記する
  8. ウェブページはJavaScriptをoffにしても動作するように作る

●ご自身の読者に伝えたいことはありますか?

 ブログには「情報の扉の、そのまた向こう」というサブタイトルを付けています。図書館やアーカイブズ関連情報を集約・発信するエントリーには,記事のタイトル,出典と日付,URLを記録していますが,これがそれぞれの情報への「扉」だと言えるでしょう。URLをクリックすると別ウィンドウで記事が開きます。記事の向こうには(たぶん)リアルな出来事があり,そのまた向こうには,記事からこぼれ落ちた世界というものが広がっているに違いありません。特に震災関連情報を見渡していると,記事になっていないような出来事が,様々な場所で,そしてまた被災された方々の一人一人にあるのだろうな,と思えてきます。

 情報の扉の,そのまた向こうに何を見るのかは,読者にまかされています。その意味で,読者にもリテラシーや想像力が求められているのかもしれません。

 今後とも,ブログを始め,実業史研究情報センターがインターネット等を通じて発信する情報をご活用いただければ幸いです。

(協力・渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター・茂原暢さん)

Ref:
http://www.ndl.go.jp/jp/publication/biblos/backnumber/2007/10/02.html
http://www.shibusawa.or.jp/
http://www.shibusawa.or.jp/center/ba/index.html
http://d.hatena.ne.jp/tobira/
http://rensou-center.cs.nii.ac.jp/
http://ebiki.jp/
E1308