E1287 – ユネスコがOAポリシー策定を支援するガイドラインを発表

カレントアウェアネス-E

No.214 2012.04.26

 

 E1287

ユネスコがOAポリシー策定を支援するガイドラインを発表

 

 米国のハーバード大学やマサチューセッツ工科大学,国立衛生研究所(NIH)等,自機関の研究者や助成対象者に対して出版した論文のオープンアクセス(OA)化を義務づけるポリシーを策定する機関が世界中で増加している。このような機関の情報をまとめたウェブサイト“ROARMAP”には,2012年1月時点で,319機関が登録されている。

 こうした背景の下,2012年4月6日に,ユネスコ(UNESCO)は ,“Policy Guidelines for the Development and Promotion of Open Access”というガイドラインを公表した。OAは,情報や知識へのユニバーサルアクセスを実現するというユネスコの目標において中心的な位置を占めている。ユネスコは,このガイドラインを通じて,国または国際的なレベルの意思決定や政策立案に関わる人々の(義務化を伴うとは限らない)OAポリシー策定を支援することを目指している。

 ガイドラインは全9章から構成されている。第1章から第7章までにおいては,OAの重要性や利点,ビジネスモデル,推進戦略等の基本的知識がまとめられており,第8章及び第9章では,メインとなるOAポリシーの策定について扱われている。

 第8章では,OAポリシーの策定における枠組みが示され,策定の際に留意すべきポイントが様々な論点について整理されている。その一部を紹介する。

  • 義務化の有無:OAポリシーが真に効果を発揮するためには義務化するべきである。研究者は義務化を好意的に受け入れているという調査結果もある。
  • OAの種類:著者によるセルフアーカイブ(グリーンOA)とOAジャーナルの刊行(ゴールドOA)という方法がある。ゴールドOAの義務化は特定のジャーナルへの投稿を強要することになり問題があるが,OAジャーナルへの投稿自体は多くのポリシーで奨励されている。助成機関によっては研究資金からOAジャーナルへの投稿料を支出することを認めている。
  • 対象コンテンツ:ほとんどのOAポリシーでは学術雑誌論文を対象にしており,学位論文を含めるものも多い。図書について触れているポリシーも多いが,義務化の対象には含まれていない。助成機関では研究データを対象にするところも増加している。
  • エンバーゴ(禁止期間):出版社の多くはOAを許可するまでに一定期間のエンバーゴを設けており,自然科学分野では通常6か月から12か月である。ほとんどのOAポリシーでは最大12か月までのエンバーゴを認めている。
  • 免除(waiver):論文の投稿先ジャーナルが著作権譲渡を要求する場合等,著者がOAポリシーに応じることができないケースのために,免除条項を設けているポリシーもある。

 同章の末尾には,OAポリシーの類型を「即時デポジット・免除なし」「著者による権利保持」「一定期間内にデポジット」「出版社許可後のデポジット」「義務化なし」の5つに整理した表が掲載されている。

 続く第9章では,前章で示された枠組みに沿って,「政府機関・助成団体向け」及び「研究機関向け」の2種類のOAポリシー策定ガイドラインが示されている。これらのガイドラインは,基本的な内容は似ているが,論文のデポジット先や投稿料に関する項目等では違いが見られる。

 文末には,参考文献や用語集のほか,付録としてOAポリシーの例やその解説も掲載されている。

(関西館図書館協力課・林豊)

Ref:
http://roarmap.eprints.org/
http://www.unesco.org/new/en/media-services/single-view/news/open_access_to_scientific_information_policy_guidelines_for_open_access_released/