E1270 – Code4Libカンファレンス2012が開催される<報告>

カレントアウェアネス-E

No.211 2012.03.08

 

 E1270

 Code4Libカンファレンス2012が開催される<報告>

 

 図書館関連のシステムに関するコミュニティ“Code4Lib”の主催するカンファレンスであるCode4Lib Conference 2012(E1033E1153参照)が,2012年2月6日から2月9日(現地日付)にかけて,米国ワシントン州シアトル市にて行われた。米国の図書館関係者を中心に,世界各地から約250名が集まり,日本からも2010年に設立されたCode4Lib JAPANのメンバーをはじめ,筆者らを含めて10名が参加した。

 今回のカンファレンスは,プレカンファレンス10件,基調講演2件,発表23件,ライトニングトーク35件で構成された。プレカンファレンスでは,OCLCのWeb APIを利用するチュートリアルや,ディスカバリーインタフェースであるBlacklightのインストールについてのレクチャーなどが実施された。その他にもLinked Data(CA1746参照)についてのセッションや,蔵書目録中の地理情報に基づいて新たな検索サービスを開発することについて議論する“Geo”セッションなどがあった。初日の基調講演では,ジョージワシントン大学のチュドノフ(Dan Chudnov)氏によってCode4Libの現状と今後の課題が語られた。バージニア大学のノヴィスキー(Bethany Nowviskie)氏による最終日の基調講演では,オープンなプロジェクトを運営するときの経験や考え方について紹介があった。

 発表では,MARCデータをLinked Dataとして公開できるようにするソフトウェアや,NoSQLで作成したFRBRのデータベース,Schema.orgなど,メタデータ関連の話題が多かった。また,全文検索エンジンSolrのパフォーマンス向上のようなサーバサイドの話から仮想的な本棚インタフェースやWebのフロントエンドの話題まで,多岐にわたる発表があった。セッションの合間に設けられたライトニングトークでは,岡本真氏(アカデミック・リソース・ガイド株式会社),吉本龍司氏(Nota Inc.),高久雅生氏(物質・材料研究機構)及び江草由佳氏(国立教育政策研究所),筆者(常川)の5名4組がCode4Lib JAPANのメンバーとして発表を行った。

 開発者としての視点と図書館関係者ならではの視点の両方が存在する本カンファレンスの特徴ゆえか,近年注目されている情報技術を応用して新たな価値を付加していく特徴が今年は顕著であった。例えば,開発者がプログラムソースを管理するために開発されたGitを,機関リポジトリ中の資料管理ツールとして転用した事例では分散型バージョン管理技術の図書館における価値を付加したといえる。また,セッションで紹介されたプログラムの大半がGitHubと呼ばれるオープンソース開発者向けSNSにおいてソースコードを公開しており,開発者同士の交流とオープンソースプロジェクトの活動とが融合しつつある状況をカンファレンス全体で感じた。

 なお,基調講演と発表,ライトニングトークの内容は録画され,インターネット上で公開されている。また,3月5日には,日本からの参加者によるCode4Lib 2012参加報告会が横浜市で行われた。

(筑波大学大学院図書館情報メディア研究科・常川真央)
(情報・システム研究機構・加藤文彦)

Ref:
http://code4lib.org/conference/2012/
http://www.code4lib.jp/
http://code4lib.org/conference/2012/schedule
http://www.code4lib.jp/2012/02/947/
http://archive.mag2.com/0001316391/index.html
CA1746
E1033
E1153