E1218 – データセンターが研究と社会に与える影響とその意義(英国)

カレントアウェアネス-E

No.201 2011.09.29

 

 E1218

データセンターが研究と社会に与える影響とその意義(英国)

 

 2011年8月30日,英国研究情報ネットワーク(Research Information Network:RIN)が,“Data centres: their use, value and impact”と題するレポートを公開した。

 この背景には,近年,研究過程から生まれるデータを再利用することで新たな研究等を進めることができるようになっているという実態がある。それを支えるのがデータセンターである。データセンターは,研究者が質の良い研究データにアクセスして再利用ができるようにするために,研究者が自身の生み出した研究データを登録し保存することが可能な国レベルのサービスを提供したり,研究者が適切なメタデータを付与できるようにする等の支援を行っている。レポートでは,英国の8つのデータセンターについて,データセンター利用者調査やデータセンターに対して研究資金を提供する団体へのインタビュー,ケーススタディの検証をもとに,データセンターが研究活動に与える影響とその意義,そして研究者およびデータセンター等に対する提言をまとめている。

 レポートは,データセンターの提供するデータが様々な方法で研究者に役立てられており,研究者の多くは自身の研究にとってデータセンターの提供するデータが重要なものであると考えていると述べる。とりわけデータセンターの意義として,研究の効率化への貢献とその質への寄与が指摘されている。また,データセンターのスタッフによるデータ管理と研究者支援サービスが,研究への貢献を下支えするものであることも述べられている。

 最後に結論部では,以下の7点が今後の戦略の方向性として提言されている。

  • データセンターへの研究資金提供団体と政策立案者は,国レベルのデータセンターの支援と促進を継続すべきである。
  • データセンターは研究者がデータを参照したり,新規研究を行ったりするためにも重要なものであるから,両方の目的のための利用が維持され,奨励されるべきである。
  • データセンタースタッフによるデータ管理と研究者支援は重要なものであるから,このスタッフの役割へのサポート等がなされるべきである。
  • データセンターは,企画とアドヴォカシーを目的に,利用者と利用状況の情報収集を継続すべきである。
  • 研究者が研究データを提供するように仕向けるようにする必要がある。データ収集率を向上させるためには,研究者からのデータ提供に関する国内外の取り組みをチェックし,その成果を取り入れる必要がある。
  • データセンターが大規模な研究を支援するためには,分野横断的にデータセンター間で協調することが必要であるから,データセンターをまたいだデータディスカバリ機能の開発が必要となるだろう。
  • 国レベルのデータセンターが行えることには限りがある。そのため,地方・国・国際のそれぞれのレベルのサービスと効果的に協力するための方法についてさらに検討を進める必要がある。

Ref:
http://www.rin.ac.uk/system/files/attachments/Data_Centres_Report.pdf
http://www.rin.ac.uk/our-work/data-management-and-curation/benefits-research-data-centres