カレントアウェアネス-E
No.176 2010.08.05
E1082
CDNLAO 2010カントリーレポート(3) マレーシア,シンガポール
マレーシア
マレーシア国立図書館(National Library of Malaysia:NLM)では,同国のコミュニケーション・マルチメディア機構と協同で,2010年3月に“U-Library(Ubiquitous Library)”というプロジェクトを開始している。「すべての家に図書館を」をスローガンに掲げるこの“U-Library”は,U-Libraryポータルや図書館管理システム,キャッシュレスでの支払い機能,ブロードバンドのインフラなど,7つの要素で構成されており,U-Libraryポータルからは,オンラインで本の貸出を申し込むことが可能である。
NLMの運営するMylibと呼ばれる電子図書館ポータルサイトは,国内各地域のデジタルコンテンツのデータベースやポータルサイトへの入り口となっているもので,現在28のポータルサイト等が登録されている。またこのMylibを通じて,電子書籍や電子新聞等の電子リソースへ移動し,利用することができる。
国外での連携協力の点では,モロッコに本部のあるイスラム教育・科学・文化機構(Islamic Educational, Scientific and Cultural Organization)と協同で行っている,イスラム関係の手稿資料の管理に関する専門家会議がある。2009年にNLMで行われたその会議では,手稿資料の保存と,修復技術を学ぶための地域センターの設立が求められた。また,手稿資料管理センターが果たす役割と,資料を保存することの重要性が訴えられた。
シンガポール
2009年2月から,シンガポール国立図書館(National Library of Singapore:NLS)は新たな情報提供サービスとして,“Reference Point Document Delivery Service”を開始した。このサービスは,オンラインのレファレンスサービスと,文献提供サービスが一体となったもので,図書館スタッフが資料の推薦を行い,利用者はその資料を専用の申込インターフェースを使って,どこからでも受け取れるようにするというものである。
デジタルアーカイブの取り組みとしては次の2点を紹介する。まず,NewspaperSGは,インターネットでフルテキストにアクセス可能な,シンガポールの新聞17紙のデータベースである。これは,1831年から2006年までの英語のニュース記事を提供するもので,このうちThe Straits Times紙の1990年以降の記事については,NLSと国内の公共図書館の館内公開のみとなっている。もう一つはMusicSGである。これは,シンガポールの国立図書館と公共図書館を運営する国家図書館委員会(National Library BoardSingapore)と,同国の作曲家・作詞家団体“Composers and Authors Society of Singapore”とが協同で行っているもので,楽譜や歌詞,音楽作品などをデジタル化し,それらを広く提供しようとするものである。
以上のほか注目すべき事業として,様々な主題やトピックに関するオンラインガイドを集め,利用者の調査に役立てるとともに,図書館員らが知識を共有することのできる“NLS Resource Guide”や,NLSを筆頭に,国内の図書館,文化機関,研究機関などと協同で進められている“Singapore Memory Project”がある。“Singapore Memory Project”は,シンガポールの文化的・知的記憶を集め,保存し,そして提供しようとするもので,2015年8月のシンガポール建国50周年に向けた国家的事業として,500万の「記憶」を収集することを目指しているという。