カレントアウェアネス-E
No.175 2010.07.22
E1075
CDNLAO 2010カントリーレポート(2) オーストラリアなど
オーストラリア
オーストラリア国立図書館(NLA)は,2009年12月に“Trove”という情報検索サービスを公開した。これは“Libraries Australia”“Australian Newspapers”などNLAの複数の検索システムを統合的に検索することで,図書だけでなく,動画や音声,画像や手稿資料,そして新聞記事など,9,000万件の資料を検索できるシステムであり,そのコンテンツの多くはオンラインで閲覧・視聴が可能であるという。利用者はすべてのフォーマットの資料にタグやコメントを付与することができる。
新たな取り組みとして,NLAは2009年に3年間のプロジェクトで「忘れられたオーストラリア人」(Forgotten Australians)へのインタビューを開始し,オーラルヒストリー資料の作成を始めている。「忘れられたオーストラリア人」とは,孤児であった等の理由により,幼いときに強制的に施設に収容され虐待を受けた人々を意味するものである。また,「盗まれた世代」(Stolen Generations)と呼ばれる,オーストラリア政府によって家族から引き離され白人社会の中で養育された先住民の世代が存在するが,その「盗まれた世代」へのインタビューによって作成されたオーラルヒストリー資料の,オンラインでの提供が始められた。
2009年の資料電子化の進捗については,15万件の資料と,主要な新聞の52万ページ以上が完了している。また,ウェブアーカイブプロジェクトである“PANDORA”(CA1537参照)が,オンラインの新聞や公的機関のブログも収集対象に含めることになった。
ニュージーランド
ニュージーランド国立図書館(NLNZ)は2009年4月に,先住民であるマオリ族のニーズに対応するため,「二文化実践計画」(Bi-cultural Implementation Plan)を発表した。2010年4月には,国家デジタル遺産アーカイブ(National Digital Heritage Archive)の機能拡張を行い,ボーンデジタルやデジタル化されたコレクションへのアクセスの改善と、それらの資料管理と運営の改善を実現した。コレクションへのアクセスに関する進展ではそのほかに,“Find”という統合検索(ベータ版)の導入や,7万件以上のデジタル化された画像をオンラインで提供する“Picutres Online project”の開始などが挙げられている。
NLNZが行った連携協力については,次のような報告が挙げられている。国内では,ニュージーランド教育省と協力して行った,学校に提供しているオンラインの学習コンテンツの改良や,ニュージーランドの公共図書館や大学など多数の機関で構成される“Digital New Zealand”及び議会図書館などと連携して実施している,19世紀の下院議事録関係資料のデジタル化事業などである。国際的なレベルでの協力では,NLNZ館長が国立図書館長会議(CDNL)の議長として活動しており,またNLNZは組織としてもCDNLの事務局として協力していることや,電子図書館のインターフェースである“National Libraries Global”の開発の継続と,そのインターフェースのアプリケーションとソースコードをスペイン国立図書館へ提供したことなどがある。
Ref:
http://www.ndl.go.jp/en/cdnlao/meetings/2010.html
http://www.nla.gov.au/oh/fafcm/
http://www.natlib.govt.nz/catalogues/library-documents/bicultural-implementation-roadmap-june-2010
http://www.natlib.govt.nz/about-us/current-initiatives/appendices-journals-house-representatives
CA1537