カレントアウェアネス-E
No.169 2010.04.14
E1036
“DAISY Translator”日本語版の提供がスタート
2010年4月6日,DAISYコンソーシアム,財団法人日本障害者リハビリテーション協会及びMicrosoft社は,電子書籍のバリアフリー化へ向けた取り組みを協力して行うと発表し,その会見の様子が複数のメディアで報じられた。バリアを軽減するには文書が適切なフォーマットで電子化されることが必要であるとし,同日から,Microsoft社の文書作成ソフトWordを「DAISY」(CA1486参照)形式の文書を作成できるように機能拡張するためのアドインソフト“DAISY Translator”の日本語版の無償提供が開始された。
DAISYはXMLベースのフォーマットで,DAISY形式で作成された文書は,AMIS(アミ)等の再生ソフトを使うことで文章の読み上げや,読み上げ部分のハイライトなどが可能になる。これまでDAISY形式の文書を作成するには,XHTMLのソースコードに関する知識が必要とされていたが,“DAISY Translator”を使えば,ファイル形式が「.docx」のWord文書からDAISY3規格のマルチメディア,あるいは同規格のXMLを比較的容易に作成することができるとされている。Microsoft社が,DAISY文書作成のためのWord用アドインの開発を発表したのは2007年11月で,最初のバージョン「1.0」がソースコードと共に2008年1月に公開された。英語版はその後も改良が重ねられており,2009年3月には最新のバージョンである「2.1.1」がリリースされている。今回発表されたのは,このバージョン「2.1.1」の日本語版とのことで,日本障害者リハビリテーション協会DAISY研究センターのウェブサイトからダウンロードできる。
専門的な知識のない個人でもDAISY形式の文書を作成することができるため,障害を持つ子ども用の教材を学校の先生が自らDAISY形式の文書で作成する,といった教育現場での活用のほか,家庭内の学習での活用等が想定されているとのことである。それに伴い,Microsoft社のプレスリリースでは,日本障害者リハビリテーション協会と協力し,“DAISY Translator”を使った学習教材作成の講習会を始めとした普及活動を行っていくことが発表されている。
会見では,“DAISY Translator”の発表以外に,DAISYコンソーシアム会長の河村宏氏と,日本障害者リハビリテーション協会情報センター長の野村美佐子氏が,以下のようにコメントしたとのことである。河村氏は,DAISYの新たなバージョン「DAISY4」(E1029参照)と,電子書籍の共通フォーマット「EPUB」との連携が進められていることに触れ,DAISY4とEPUBの新しいバージョン「EPUB3」の両仕様を一致させたいとの意向を示している。日本障害者リハビリテーション協会は2010年4月1日に,改正後の著作権法第37条第3項の規定にある「視覚障害者等のための複製等が認められる者」に指定され,DAISY図書の作成や公衆送信が可能になったとのことで,野村氏は,これを機により多くの人にDAISY図書を届けていきたいとコメントしている。
Ref:
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3837
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100406_359377.html
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20411689,00.htm
http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/software/save_as_daisy.html
http://www.microsoft.com/presspass/press/2007/nov07/11-13DaisyPR.mspx
http://sourceforge.net/projects/openxml-daisy/files/
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/pdf/21_houkaisei_seirei_gaiyou.pdf
CA1486
E1029