「研究の研究」に関する最新のアプローチを推進するコンソーシアムRoRI、コロナ禍における学術コミュニケーションシステムの対応を分析・評価した報告書を公開

2021年12月6日、「研究の研究」に関する最新のアプローチを推進するコンソーシアムResearch on Research Institute(RoRI)は、コロナ禍における学術コミュニケーションシステムの対応を分析・評価した報告書“Scholarly communication in times of crisis: The response of the scholarly communication system to the COVID-19 pandemic”の公開を発表しました。研究者、出版社、その他の学術コミュニケーションの専門家で構成されるプロジェクトチームによる成果です。

プロジェクトでは、英・ウェルカム・トラストが調整役を担った新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の研究データ・研究成果共有に関する声明と、COVID-19に関する研究成果の査読・公開の迅速化を目指す学術出版社らによる共同イニシアチブ“C19 Rapid Review Initiative”へのコミットメントがどの程度守られたかが調査されました。

発表では、調査により判明した点として、次の内容を含む5点が示されています。

・COVID-19に関する研究論文の大部分は無料公開またはオープンアクセスになっている
・プレプリントでの公開、データ共有の程度は多くの人が期待していたよりも(はるかに)低い

コミットメントでは、COVID-19に関する研究について、学術誌やその他査読付き出版物での掲載前にプレプリントサーバーに投稿するよう呼び掛けています。それにも関わらず、査読付きのCOVID-19の全アウトプットの内、対応するプレプリントを見つけることが出来たのはわずか5%であった、と述べています。

発表では本報告書の結論として、学術コミュニケーションの改善は共同責任であって特効薬は存在しないこと、システムの変化を実現するためにステークホルダーのより緊密な協力が求められることを挙げています。

Commitments to early sharing of research and data during the pandemic fall short: collaboration is the missing ingredient(RoRI, 2021/12/6)
https://researchonresearch.org/tpost/8ykcy0fkt1-commitments-to-early-sharing-of-research

Scholarly communication in times of crisis: The response of the scholarly communication system to the COVID-19 pandemic(figshare, 2021/12/6)
https://doi.org/10.6084/m9.figshare.17125394

参考:
70以上の研究助成団体・出版者等が新型コロナウイルスに関する研究データ及び研究成果の広範かつ迅速な共有に関する声明に署名
Posted 2020年2月4日
https://current.ndl.go.jp/node/40157

“C19 Rapid Review Initiative”の参加メンバー数が20に到達:新型コロナウイルスに関する研究成果の査読・公開の迅速化を目指す学術出版社らによる共同イニシアチブ
Posted 2020年8月21日
https://current.ndl.go.jp/node/41799

Digital Scienceやウェルカム財団らが「研究の研究」に関する最新のアプローチを推進するコンソーシアム、Research on Research Institute (RoRI)を立ち上げ
Posted 2019年10月8日
https://current.ndl.go.jp/node/39215