設立1周年を迎えたI4OAの現況(記事紹介)

2021年10月6日、セマンティックウェブ技術の活用によるオープンな書誌データ・引用データ公開を通してオープンスカラシップの推進に取り組む非営利団体OpenCitationsは、同団体も設立に携わったInitiative for Open Abstracts(I4OA)が2020年9月24日の設立から1周年を迎えることを記念し、その現況を紹介する記事を公開しています。

I4OAは、抄録データ(abstract)のオープン化を推進するイニシアティブです。全ての学術出版社に対し出版物の抄録データをオープン化するよう呼び掛けており、可能であればデータをCrossrefに提出する形式での実現を求めています。

設立時点でI4OAへの支持を表明していた出版社は40社でしたが、現在は86社となり2倍以上に増加しています。一方で、その中に出版数が多い4社(Elsevier、Springer Nature、Wiley、Taylor & Francis)は含まれていません。その背景事情として、記事では次のような点を推測として示しています。

・これらの出版社は抄録を抄録サービスに販売することで収益を得ているようであり、I4OAへの支持に伴う収益減を懸念しているように見える
・Elsevier社については、抄録のオープン化を、自社の抄録・引用文献データベースであるScopusに対するビジネス面での脅威と考えている可能性がある

記事では、オープン・アブストラクト(オープン化された抄録)の数を紹介するとともに、この1年で起きた出来事とその影響についても述べています。特に、オープン・アブストラクトの主要なデータソースである学術文献検索サービスMicrosoft Academicの2021年末での終了がもたらす影響の大きさを強調しています。

The Initiative for Open Abstracts: Celebrating our first anniversary(OpenCitations blog, 2021/10/6)
https://opencitations.wordpress.com/2021/10/06/the-initiative-for-open-abstracts-celebrating-our-first-anniversary/

抄録データのオープン化を推進するイニシアティブI4OAが立ち上げられる
Posted 2020年9月25日
https://current.ndl.go.jp/node/42082

Microsoftの学術情報についてのサービスMicrosoft Academic Services(MAS)が2021年末をもって終了
Posted 2021年5月7日
https://current.ndl.go.jp/node/43937

米・OurResearch、Microsoft Academic Graph(MAG)の後継版についての計画を発表
Posted 2021年6月25日
https://current.ndl.go.jp/node/44298