複製可能性のない論文は、複製可能性のある論文よりも引用される(文献紹介)

2021年5月21日付けで、米国科学振興協会(AAAS)が刊行するオープンアクセスジャーナル“Science Advances”に、研究論文“Nonreplicable publications are cited more than replicable ones”が公開されました。著者は、米・カリフォルニア大学サンディエゴ校のMarta Serra-Garcia氏とUri Gneezy氏です。

論文では、心理学、経済学、総合分野におけるトップジャーナル掲載論文を対象として調査した結果、複製可能性(replicability)のない論文は、複製可能性のある論文よりもより多く引用されていることが報告されています。この被引用数の差は、複製に失敗したことが公開された後も、変化しませんでした。複製に失敗したことが公開された後の引用のうち、12%のみが複製可能でないことについて言及していました。

先行研究では、専門家は論文の複製可能性についてうまく予測できることが示されています。それにも関わらず、複製可能性のない論文がトップジャーナルで採択される理由については、複製可能性のない研究は興味深くみえる分、再現性(reproducibility)については低い水準が適用されてしまうトレードオフが存在する可能性を指摘しています。

Serra-Garcia, Marta; Gneezy, Uri. Nonreplicable publications are cited more than replicable ones. Science Advances. 2021, 7(21), eabd1705.
https://doi.org/10.1126/sciadv.abd1705

参考:
米国情報標準化機構(NISO)、研究再現性に関するバッジ付与についての推奨指針を公表
Posted 2020年12月8日
https://current.ndl.go.jp/node/43321

欧州委員会の研究・イノベーション総局、欧州における研究成果の再現性についての報告書を公開
Posted 2020年12月8日
https://current.ndl.go.jp/node/42710