欧州委員会の研究・イノベーション総局、欧州における研究成果の再現性についての報告書を公開

2020年12月1日付で、欧州委員会の研究・イノベーション総局(Directorate-General for Research and Innovation)による報告書“Reproducibility of scientific results in the EU:Scoping report”が、欧州委員会出版局のウェブサイト上で公開されています。

同報告書は、2020年1月23日にベルギーのブリュッセルで開催された研究成果の再現性の欠如の問題に関する専門家セミナーの議論をまとめたものです。報告書作成の目的として、欧州で生産された研究成果の再現性欠如の実態について欧州委員会の理解を深め、欧州連合(EU)における研究・イノベーションの文脈で、この問題への適切な対応を設計する際に役立てることを挙げています。

同報告書は、研究の再現性は実践の積み重ねで構築され、優れた実践を保証するメカニズム・新たな発見やイノベーションの原動力として重要であることを確認した上で、バイアスや不十分な実験デザイン、不適切な統計の取り扱いなどに起因する、再現性の欠如した研究成果物が近年増加している「再現性の危機」を報告しています。

こうした「再現性の危機」の状況を踏まえて、同報告書は研究成果の再現性欠如を軽減するための研究者・研究助成機関・出版社等の近年の取組や、文献等で示された解決策をリスト化して紹介しています。特に「各機関のガイドライン作成」「各キャリア段階での研究者への教育制度」「研究助成制度」を、EUの研究・イノベーションにおいて優先的に介入すべき3領域と定めて、再現性向上に有効な行動を具体化するための提言を示しています。

Reproducibility of scientific results in the EU:Scoping report(Publications Office of the European Union,2020/12/1)
https://doi.org/10.2777/341654

参考:
欧州委員会研究・イノベーション総局、学術出版と学術コミュニケーションの将来に関する報告書を公開
Posted 2019年2月8日
https://current.ndl.go.jp/node/37551

新たな研究成果公開のプラットフォームOctopus(記事紹介)
Posted 2020年8月11日
https://current.ndl.go.jp/node/41710