米・シカゴ連邦準備銀行(Federal Reserve Bank of Chicago)が、2021年4月付で、調査結果報告書“The Returns to Public Library Investment”を刊行しました。
米国では、1万5,000館の公共図書館の運営のため、毎年120億ドル以上の資金が地方政府から支出されており、また、毎年50%を超す国民が図書館を利用しているものの、コミュニティや子どもに与える図書館の影響に関する調査が少ないことから、米国の公共図書館のほぼすべてのデータを用いて、資金の拠出の、図書館資源・住民の利用・子どもの成績・地域の住宅価格に与える影響を調査したものです。調査は、差分の差分法(difference-in-difference approach)を用いて行われました。
調査の結果、図書館に拠出する資金を増加させると、図書館でのイベントへの子どもの参加が18%、子どもの資料の貸出が21%、来館数が21%増えることを示したとしています。
また、図書館の利用が増える結果として、近隣の学区における子どものテストの成績が向上するとし、近隣の図書館への拠出額が児童・生徒1人あたり1,000ドル以上の場合、読解に関するテストの成績を標準偏差で0.02上昇させているとしています。一方で算数のテストの成績には影響を与えないとしています。
住宅価格については図書館への拠出が急激に増えた後でも変化がなく、これは、住民が、公共図書館のコスト増と質の改善について、内在化していることを示唆しているとしています。
The Returns to Public Library Investment(April 2021)
https://www.chicagofed.org/publications/working-papers/2021/2021-06
https://doi.org/10.21033/wp-2021-06
※二つ目のリンクが報告書本文です[PDF:59ページ]
参考:
英・ロンドン図書館、同館の経済的・社会的影響に関するレポートを公開
Posted 2021年3月18日
https://current.ndl.go.jp/node/43571
E2313 – カナダの美術館・図書館・文書館・博物館がもたらす経済価値
カレントアウェアネス-E No.400 2020.10.15
https://current.ndl.go.jp/e2313