ジャマイカ・西インド諸島大学モナ図書館におけるデジタル化プロジェクトについて(文献紹介)

2021年1月14日付で、The Serials Librarian誌に、ジャマイカの西インド諸島大学モナ図書館職員のKarlene Robinson氏らによる共著論文“Digital Accessibility: Overcoming the Challenges of Managing Grey Literature in Jamaica: The Case of the University of the West Indies Mona Library”が公開されました。

灰色文献のアクセスや利用可能性に関する課題を解決するための方法の一つとして、同館のデジタル化プロジェクトの事例が紹介されています。

論文の中で、研究に資すること、先住民関連の一次情報源となることをはじめとした灰色文献の価値が指摘され、デジタル化を行い公開することによって、研究・教育での利用、資料保存等を通して学術機関のイメージ向上につながること等がまとめられています。

2007年から2012年にかけての同大学の戦略計画で、通信技術を活用した教育・学習環境の強化が挙げられたことを受けて、同館では、2008年から所蔵コレクションのデジタル化プロジェクトを開始しました。当初は正式な体制や支援がなかったものの、利用可能な資金の活用、国内外の研修プログラムへの参加による職員育成、手順の文書化等を行い、継続的にデジタル化コレクションを拡充したと述べられています。

その後、2017年から2022年の同大学の戦略計画で大学のイメージ向上が掲げられ、同館も目標達成に関わる部門とされたことを受け、館内のデジタル化に関する体制が整備されました。ワークフローやデジタル化の質と量の改善のため、海外のベストプラクティスを取り入れたこと等が述べられています。また、デジタル化を進めるうえで直面した課題として、資金調達、著作権処理、過去の紙媒体の論文の遡及的デジタル化を挙げています。結論の箇所では、各図書館にとって可能な、基本的な方法から始めることの重要性等に言及しています。

Robinson, Karlene. et al. Digital Accessibility: Overcoming the Challenges of Managing Grey Literature in Jamaica: The Case of the University of the West Indies Mona Library. The Serials Librarian. 2021.
https://doi.org/10.1080/0361526X.2020.1860862

参考:
CA1952 – 灰色文献のいま~2010年代の動向を中心に~ / 池田貴儀
カレントアウェアネス No.340 2019年6月20日
https://doi.org/10.11501/11299456