スウェーデン・BibsamコンソーシアムとElsevier社の雑誌購読契約中止の影響に対する研究者向けアンケートの自由回答の内容分析(文献紹介)

2020年11月11日付で、英国逐次刊行物グループ(UKSG)が刊行するInsights誌において、論文“Cancelling with the world’s largest scholarly publisher: lessons from the Swedish experience of having no access to Elsevier”がオープンアクセス(OA)により掲載されています。

同論文は、スウェーデンのBibsamコンソーシアムが、2018年のElsevier社との雑誌購読契約中止を受けて実施した契約中止の影響に関する研究者向けアンケートの回答内容の分析結果を報告するものです。同社との契約交渉・研究者向けアンケートの実施や分析を担当した、ストックホルム大学図書館・スウェーデン王立図書館(NLS)・リンショーピン大学図書館・カロリンスカ研究所図書館の各図書館員が共著で執筆しました。

同論文はアンケートで得られた自由回答を分析対象としました。著者らは合計1,241件の自由回答を、中止に好意的な意見・中止に否定的な意見・研究者に新たに生じた反応・交渉決裂状態の復旧に対する希望の程度・回答の障害となる不確実さ・質問票の内容に対する意見の6テーマに分けて分析を進めました。回答内容の分析から得られた主な結論として、以下の3点を指摘しています。

・契約中止の是非については研究者間のコンセンサスが存在しないこと

・高等教育機関や図書館コンソーシアムの活動内容について、個々の研究者が把握可能な知識に限りがあるため、契約中止に対して明確な立場をとることが困難であったこと

・契約中止は研究者のOAに対する意識に影響を与え、著作権ライセンスや公表先の選択を通して、出版に関する行動に変化を促したことが示唆されること

Olsson, Lisa et al. Swedish Researchers’ Responses to the Cancellation of the Big Deal with Elsevier. Insights, 2020, 33:25.
http://doi.org/10.1629/uksg.521

Swedish researchers’ response to the cancellation of the big deal with Elsevier(NLS,2020/11/19)
https://www.kb.se/samverkan-och-utveckling/nytt-fran-kb/nyheter-samverkan-och-utveckling/2020-11-19-swedish-researchers-response-to-the-cancellation-of-the-big-deal-with-elsevier.html

参考:
スウェーデン・Bibsamコンソーシアム、Elsevier社との契約を更新しないと発表
Posted 2018年5月17日
https://current.ndl.go.jp/node/36014

BibsamコンソーシアムによるElsevier社との契約解除から半年を受け、スウェーデン王立図書館(NLS)が研究者・学生等への影響調査を実施中
Posted 2019年1月16日
https://current.ndl.go.jp/node/37379

スウェーデン・Bibsamコンソーシアム、Elsevier社と3年間の“Read & Publish”契約を締結
Posted 2019年11月25日
https://current.ndl.go.jp/node/39581

スウェーデン王立図書館(NLS)、BibsamコンソーシアムとElsevier社の雑誌契約解除による影響調査報告書の英訳版を公開
Posted 2020年2月12日
https://current.ndl.go.jp/node/40211

スウェーデン・BibsamコンソーシアムとElsevier社の雑誌購読契約中止の影響と得られた教訓(文献紹介)
Posted 2020年4月30日
https://current.ndl.go.jp/node/40870