米・ユタ州大学図書館コンソーシアムが州内の学生・教員に実施した教科書・オープン教育資源(OER)に対する意識調査(文献紹介)

国際オープン・遠隔教育協議会(International Council for Open and Distance Education:ICDE)の刊行するオープンアクセスの査読誌“Open Praxis”の第12巻第3号(2020年7-9月)に、論文“Academic Librarians Examination of University Students’ and Faculty’s Perceptions of Open Educational Resources”が掲載されています。

同論文は、米・ユタ州の大学図書館コンソーシアム“Utah Academic Libraries Consortium (UALC)”が州内の学生・教員を対象に実施した、教科書・オープン教育資源(OER)に対する意識調査の結果を報告するものです。教科書にかかる費用が学業に与える影響、教科書費用の問題の解決手段としてのOER採用の実現可能性、OERに関する図書館員の支援のニーズ等についてのアンケート調査が行われました。州内の高等教育機関10機関の学生2,574人、教員1,157人の回答に基づいて、次のようなことを報告しています。

・多くの学生は、教科書購入にかかる高額な費用が学業に悪影響を与えていると回答しており、授業に必要な教科書の購入を断念したことがあるという回答が65%、教科書が購入できないことが原因で授業の受講を断念したという回答が37%確認された。2年制大学の学生は、4年制大学の学生よりも教科書購入にかかる負担を重いものとして認識している。

・教科書購入に高額な費用がかかることについては、否定的な認識を持つ学生が9割以上、極端に否定的な認識を持つ学生に絞っても約4分の1という結果であった。特にコンテンツへのアクセスにアクセスコードを設定する教科書に対しては大きな不満を持っていた。

・非常勤教員は学生に教科書・参考書を購入させる割合が有意に高かったが、これは学部・学科が義務づけた教科書類の購入を求めたものと解釈される。

・教員の約9割が自分の授業に適したOERを利用する意思を示し、半数近くの教員が自分の研究分野に適したOERを見つけるための助力を求めていることが確認された。

・OER導入の動機として、教員の多数が学生の費用負担の軽減を挙げた。導入に消極的な理由として、学生にはハードコピーの教科書を使用させたいことや、品質に疑念があること、などが挙げられた。

Fischer, Lane. et al. Academic Librarians Examination of University Students’ and Faculty’s Perceptions of Open Educational Resources. Open Praxis. 2020, 12(3), p. 399-415.
http://dx.doi.org/10.5944/openpraxis.12.3.1081

参考:
E2309 – 欧州の大学図書館等のオープンエデュケーションへの関与状況
カレントアウェアネス-E No.399 2020.10.01
https://current.ndl.go.jp/e2309

SPARC、オープン教育資源(OER)の採用が、学生等に10億ドルの節約をもたらしたと発表
Posted 2018年10月15日
https://current.ndl.go.jp/node/36823

米・Babson Survey Research Group、高等教育機関における教員のオープン教育資源(OER)への意識調査報告書2018年版を公開
Posted 2019年1月10日
https://current.ndl.go.jp/node/37349

U.S. PIRG、出版社と大学の契約によって学生が割引された教科書費用を授業料として自動的に支払う“inclusive access”契約の調査レポートを公開
Posted 2020年3月18日
https://current.ndl.go.jp/node/40533