2020年10月20日付で、英国逐次刊行物グループ(UKSG)が刊行するInsights誌に、米・ペンシルベニア大学出版局のPatrick H. Alexander氏の論文“Open Access and Author Rights: Questioning Harvard’s Open Access Policy”が掲載されています。
同論文は、多くの大学や研究機関のオープンアクセス(OA)方針のモデルとなっている米・ハーバード大学のOA方針を中心的に取り上げながら、OAと著者の権利を論じた内容です。OA運動に関する中心的な理論家Peter Suber氏の著書“Open Access”や、米・SPARCの発表した「著者の権利」の留保モデル、米国著作権法(合衆国法典第17編)等から、OA運動においても研究者は著者として自身の成果物の著作権を完全に保持すべきであることを確認した上で、同大学及び後続する様々な機関のOA方針が、大学・機関へ著者が著作権に基づく権利を譲渡する内容になっていることを指摘しています。
同論文は、こうした内容によって、自身の研究成果物の出版に制限をかけられるなど、著者にとって不利益に働く場合を挙げながら、同大学に代表されるOA方針は「著者は自分の著作物に対する知的所有権を管理すべきである」というOA運動においても重視すべき基本原則を損なっていると主張しています。
Alexander, Patrick H. Open Access and Author Rights: Questioning Harvard’s Open Access Policy. Insights, 2020, 33:23.
http://doi.org/10.1629/uksg.525
参考:
ハーバード大学文理学部、全会一致で研究成果のOA化を義務化
Posted 2008年2月14日
https://current.ndl.go.jp/node/7292
Peter Suber氏、自著“Open Access”(2012年6月刊行)をオープンアクセスで公開
Posted 2013年7月1日
https://current.ndl.go.jp/node/23834
「著者の権利」を留保するための契約書モデル・日本語版
Posted 2006年12月28日
https://current.ndl.go.jp/node/5147
ARLとSPARC、AAPの主張「NIHパブリックアクセス方針は著作権法違反では?」に反論
Posted 2008年7月18日
https://current.ndl.go.jp/node/8333
CA1753 – 動向レビュー:大学キャンパスの中のオープンアクセス / 森 いづみ
カレントアウェアネス No.309 2011年9月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1753