材料科学・工学分野における研究データの検索・再利用・共有の実態に関する13人の研究者へのインタビュー調査(文献紹介)

オープンアクセス(OA)の査読誌PLOS ONEに、2020年9月15日付けで、材料科学・工学分野における研究データの検索・再利用・共有の実態に関する13人の研究者へのインタビュー調査について報告した論文が掲載されています。

同論文は仮想車両・自動運転等に関するオーストリアの研究センター“Virtual Vehicle Research GmbH”に所属する3人の著者が共著で執筆しました。著者らは、研究データのオープン化の実践について、材料科学・工学分野に焦点を当て、研究データの検索・再利用・共有の全体像を描き出すための調査を実施しました。調査のために同分野の研究者13人への深層面接法によるインタビューを行い、テキスト化・コード化されたインタビュー記録の内容分析を行っています。

論文では、調査・分析から得られた主要な知見として、材料科学・工学分野における研究データは、極めて多様な形態をとり、特定の研究目的のために生成されることがしばしばあるため、再利用に資するために研究データに関する正確な記述や完全な生成プロセスが必要となることを報告しています。また、調査対象の研究者は研究データを再利用に資する意図を持っているものの、データセットの検索エンジン・データジャーナル・公共リポジトリの検索といった研究データ利活用のための最新の実践に不慣れであるか、関心が少ないことを指摘しています。

研究データの共有については、特定の研究者同士の間でのみ行われる傾向にあることや、研究プロジェクトへの資金提供が、助成機関の方針によりデータのオープン化の促進のために作用する場面と、資金提供元が産業界である場合に共有に法的な制限を課するように作用する場面があることを指摘しています。

Suhr, Bettina; Dungl, Johanna; Stocker, Alexander. Search, reuse and sharing of research data in materials science and engineering—A qualitative interview study. PloS one. 15(9), 2020, e0239216.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0239216

参考:
米・Ithaka S+R、市民工学・環境工学研究者の研究活動支援へのニーズを調査したレポートを公開
Posted 2019年1月18日
https://current.ndl.go.jp/node/37403

国立大学図書館協会、「研究データに関する研究者の実態とニーズの把握のための調査の手引き」及び「研究データのオープン化とそのメリット」を公表
Posted 2020年6月16日
https://current.ndl.go.jp/node/41233

2020年度第1回J-STAGEセミナー「ジャーナルから見た研究データ:研究データ公開の意義」の講演資料が公開される
Posted 2020年9月17日
https://current.ndl.go.jp/node/42034

E2250 – 研究データの公開・利用条件指定ガイドラインの策定
カレントアウェアネス-E No.389 2020.04.23
https://current.ndl.go.jp/e2250