オープンアクセス(OA)は長期保存を保証しない:インターネット上から消滅したOAジャーナルに関する調査(文献紹介)

プレプリントサーバarXivに2020年9月3日付で、オープンアクセス(OA)ジャーナルの現在のインターネット上における保存状況等の調査結果を報告した文献“Open is not forever: a study of vanished open access journals”が公開されています。

同文献は、フィンランドの情報システム研究者Mikael Laakso氏ら3人の共著により執筆されました。2020年8月27日付の初版(Version 1)公開後、二度の改訂を経たVersion 3が9月3日付で公開されています。

学術的な研究成果物の発表が紙媒体で行われていた時代には、これらの保存は図書館員の責任の下に行われていましたが、デジタル出版とOAの普及によって、学術雑誌の長期保存の保証が揺るがされ、インターネット上から完全に消滅する可能性があるという変化が発生しています。著者らはこの変化を背景に、インターネット上からOAジャーナルが消滅する現象について、体系的な調査を試みました。Elsevier社の抄録・引用文献データベースScopus、ProQuest社傘下の図書館システムベンダEx Librisの定期刊行物のデータベースUlrichsweb、及びDOAJ(Directory of Open Access Journals)などの主要な書誌索引を用いた分析や、Internet Archive(IA)のWayback Machineによる追跡調査を行っています。

調査・分析の結果として、2000年から2019年の間に、包括的なオープンアーカイブの欠如により、世界の主要な地域・研究分野にまたがる176タイトルのOAジャーナルがインターネット上から消滅していることを指摘しています。著者らは、この調査分析の結果は学術的な研究成果の公正性に関する重大な懸念を提起するものであり、学術的な知見に対する継続的なアクセスの確保とこれ以上の散逸の防止のために、学術コミュニティは緊急に共同した行動をとる必要がある、と主張しています。

Laakso, Mikael; Matthias, Lisa; Jahn, Najko. Open is not forever: a study of vanished open access journals.
https://arxiv.org/abs/2008.11933
https://arxiv.org/ftp/arxiv/papers/2008/2008.11933.pdf
※二つ目のリンクが文献のフルテキストです。[PDF:32ページ]

参考:
オープンアクセス誌の長期保存に向けて-オランダ王立図書館とDOAJが協同を発表
Posted 2009年4月2日
https://current.ndl.go.jp/node/12392

欧州におけるオープンアクセス及び電子情報保存に係る方針・戦略に関する調査報告書が公表
Posted 2011年12月26日
https://current.ndl.go.jp/node/19821

CLOCKSS、プロジェクトが終了した場合のコンテンツ長期保存継続計画を発表
Posted 2018年11月8日
https://current.ndl.go.jp/node/37002

科学技術振興機構(JST)、J-STAGEでのPorticoのダークアーカイブを導入
Posted 2018年11月21日
https://current.ndl.go.jp/node/37081