欧州14大学の共同運営による機関リポジトリを統合して学術成果物を迅速にオープンアクセス(OA)出版するためのプラットフォーム“University Journals”(文献紹介)

2020年6月29日付で、欧州研究図書館協会(LIBER)の季刊誌“LIBER QUARTERLY”の第30巻第1号(2020)掲載の事例研究として、複数の大学の共同運営によって、個々の機関リポジトリを統合し参加大学所属の研究者による成果物をオープンアクセス(OA)出版するために整備中のプラットフォーム“University Journals”設立の経緯や展望を紹介した論文が公開されています。

“University Journals”は、査読を経て商業出版社の購読誌に学術成果を発表する伝統的な学術出版システムがオープンサイエンスの発展を阻害している一方、機関リポジトリによる成果物のOA化は研究者に十分なメリットを示せていないため進展していないという問題意識から設立の検討が始まりました。個々の大学の機関リポジトリと接続し、出版社から独立した効率的・高品質で持続可能性の高い出版プラットフォームを構築するプロジェクトとして、オランダのPICA財団等の助成を受けながら、欧州14大学のコンソーシアムにより共同研究が進められています。

“University Journals”ではあらゆる種類の学術成果物を公開することが可能であり、直接の投稿、または各大学の機関リポジトリやプレプリントサーバーを経由した投稿を受付するものとして計画されています。投稿された成果物は大学における質保証プロセスを経ますが、厳格な査読を含めたどのレベルの質保証プロセスを経るかについては柔軟性があり、公開された成果物にはどのレベルのレビュー・ピアレビューを完了したかが判別可能となるように構築を進めています。

論文ではプロジェクトチームによって、“University Journals”設立の経緯や背景とともに、Plan S原則を順守しながら研究成果の出版と流通を可能にするプラットフォームを確立して、大学図書館がオープンサイエンスの分野で重要な役割を果たしながら、学術出版の主導権を得るという展望が説明されています。“University Journals”は2020年中の運用開始を予定しています。

Woutersen-Windhouwer, S.; Méndez Rodríguez, E.; Sondervan, J.; Oort, F.J.. UNIVERSITY JOURNALS. Consolidating institutional repositories in a digital, free, open access publication platform for all scholarly output. LIBER Quarterly. 30(1), 2020, p. 1–15.
http://doi.org/10.18352/lq.10323

University Journals
https://universityjournals.eu/

参考:
E2255 – 分散型のオープンな出版フレームワーク“Pubfair”
カレントアウェアネス-E No.390 2020.05.14
https://current.ndl.go.jp/e2255

米・マサチューセッツ工科大学出版局と米・カリフォルニア大学バークレー校が迅速な査読を行うオーバーレイジャーナル“Rapid Reviews: COVID-19”を公開
Posted 2020年7月1日
https://current.ndl.go.jp/node/41388