2020年6月15日、北米の研究図書館センター(CRL)は、米国の慈善団体マッカーサー基金(John D. and Catherine T. MacArthur Foundation)の資金助成を活用して、エル・コレヒオ・デ・メヒコ(El Colegio de México)、メキシコ国立自治大学の法律学研究所(Instituto de Investigaciones Jurídicas)、イベロアメリカーナ大学(Universidad Iberoamericana)のメキシコの3研究機関とともに、メキシコ国内の行方不明者の記録に関するリポジトリ“Repository of Documentation Relating to Disappearances in Mexico(RDDM)”を構築することを発表しました。
メキシコでは2006年以降、麻薬をめぐる紛争の激化に伴い、6万人以上の行方不明者が公式に登録されています。これらの行方不明者の発生の大部分に治安当局が関与・共謀し、同国では司法へのアクセス保証とは程遠い状況にあります。
CRLは同基金からの助成により、2019年5月以降、このようなメキシコの人権侵害の拡大する状況について、公式・非公式を問わず、その記録を保存するために可能な計画の検討を進めていました。検討過程で行われたインタビュー調査等の結果から、行方不明者に関する統計的なデータベースではなく、行方不明者に関連する記録や情報を保存したリポジトリが必要であり有用である、という結論が得られています。
RDDMは、麻薬をめぐる紛争中に、メキシコで発生した行方不明者の人権に関する記録を収集・保護する共同イニシアチブとして構想されています。その目的として、紛争の様々な側面を可視化し、メキシコ社会全体、特に紛争被害者の真実・記憶・正当性に関する権利へ貢献するようなツールとなることが挙げられています。デジタル情報を収集・保護・保存するシステムの開発がイニシアチブの中核とされており、保存される資料として、公的機関の報告書や記録のほか、ジャーナリスト・研究者・非政府機関による調査や報告書等が検討されています。また、行方不明者を探す家族らが収集した情報、ソーシャルメディア・視聴覚資料に掲載された情報を集約することが想定されています。
図書館・学術機関・人権団体・行方不明者の親族等様々な関係者からの記録の収集については、メキシコ国内のプロジェクトパートナー機関が担当し、CRLは調整とプロジェクト管理、技術的アドバイス提供、プロジェクトの広報、北米の機関からの支援の調達、研究者へのアクセス奨励などの役割を担います。
RDDMは短期的には、利用しやすいプラットフォームを介して、資料を広くアクセスできるようにすることを目指しています。取り組みの最終的な目標は、真実・正義・歴史的記憶を示した重要な文書を長期的に完全な状態で保存することである、としています。
CRL Awarded Funds to Support Repository of Documentation on Disappearances of Persons in Mexico(CRL,2020/6/15)
https://www.crl.edu/news/crl-awarded-funds-support-repository-documentation-disappearances-persons-mexico
IBERO participará en la creación de un repositorio sobre desaparecidos(Universidad Iberoamericana,2020/6/15)
https://ibero.mx/prensa/ibero-participara-en-la-creacion-de-un-repositorio-sobre-desaparecidos
関連:
CRL Awarded Planning Grant for Mexican Human Rights Documentation(CRL,2019/5/22)
https://www.crl.edu/news/crl-awarded-planning-grant-mexican-human-rights-documentation
参考:
独・アーロルゼン・アーカイブズ、ナチス政権の迫害に関する約2,600万点の文書をオンライン公開
Posted 2020年4月21日
https://current.ndl.go.jp/node/40815