U.S. PIRG、出版社と大学の契約によって学生が割引された教科書費用を授業料として自動的に支払う“inclusive access”契約の調査レポートを公開

2020年2月28日、米国の消費者権利団体であるU.S. PIRGがTwitterアカウント上で、U.S. PIRGの教育基金(Education Fund)が作成した調査レポート“Automatic textbooks billing: an offer students can’t refuse?”を紹介しています。

米国では多くの大学が、セメスターの初めに支払う授業料により、学生が授業で使用される出版社プラットフォーム上の教材へアクセス可能となる“inclusive access”契約を出版社と締結しています。この契約では市場価格から割引された価格の教科書費用を授業料に含むことで、学生は授業料の支払によって、実質的な費用負担を少なく、かつ自動的に教科書を利用できる、とされています。

U.S. PIRGは全米の31大学、及び70万人以上の学部生に対する調査に基づいてレポートを作成し、次のような知見を示しながら、“inclusive access”契約について、割引が不十分または実行されていないこと、学生に契約への参加を強制する構造、契約に関する情報の欠落、等の問題点を指摘しています。

・約半数の契約が割引の仕組みを完全には開示していない
・42%の大学は少なくとも1社と公開に制限のある契約を締結しており、学生や教員にとって割引内容や仕組みが不明確になっている
・68%の契約において、契約に参加する学生が一定数に満たない場合には、割引がなくなる、割引率が低下する、契約が取り消しになるといった条項が設定されている。設定される定員は学生数の90%程度であった
・33%の契約については毎年上限のない価格上昇が発生する可能性があった。21%の契約については年間2回価格上昇する可能性があった
・5分の1の契約において、印刷体の教科書を購入できる学生の数に制限が設けられていた。制限は授業を受講する学生数の15%を上限とする、というものが多かった

@uspirg(Twitter,2020/2/28)
https://twitter.com/uspirg/status/1233086784512372740

Automatic textbook billing(U.S. PIRG)
https://uspirg.org/feature/usp/automatic-textbook-billing

Automatic textbooks billing: an offer students can’t refuse? [PDF:30ページ](U.S. PIRG)
https://uspirg.org/sites/pirg/files/reports/Automatic-Textbook-Billing/USPIRG_Textbook-Automatic-Billing_Feb2020.pdf

参考:
SPARC、米国司法省へMcGraw-Hill社とCengage社の合併計画阻止を求める文書を提出
Posted 2019年8月15日
https://current.ndl.go.jp/node/38798

オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)、世界的教育出版社Cengage社・McGraw-Hill社の合併計画の問題点に関する声明を公開
Posted 2019年12月16日
https://current.ndl.go.jp/node/39749

英国国立・大学図書館協会(SCONUL)、英国の競争・市場庁(CMA)へMcGraw-Hill社・Cengage社の合併計画について正式な調査の実施を求めた書簡を提出
Posted 2020年2月14日
https://current.ndl.go.jp/node/40243