米・カリフォルニア大学デービス校が2020年秋から実施予定の定額制教科書・授業教材提供サービス“Equitable Access”の展望(記事紹介)

学術出版系ブログ“The Scholarly Kitchen”の2019年9月4日付の投稿において、米・カリフォルニア大学デービス校が2020年秋から実施する定額制の教科書・授業教材提供サービス“Equitable Access”に関して、購買部(Campus Stores)でExecutive Directorを務めるJason Lorgan氏へインタビューを実施した記事が掲載されています。

カリフォルニア大学デービス校は、キャンパス規模で出版社と契約を結び学生全体に均等にコストを配分することで、同校の学生が教科書やその他の授業教材を利用するためのコストを大幅に削減することを意図した新プログラム“Equitable Access”実施の準備を進めています。Lorgan氏はインタビュー記事の中で質問への回答の形で“Equitable Access”実施の背景や展望を説明しています。

“Equitable Access”は全ての学生にとって教科書・授業教材にかかる費用が予測可能で一貫したものになること、教科書等の購入に関する学生への財政的援助が全ての学生を包含するようになることなどを意図して導入が準備されています。2020年秋のサービス開始後、同校の学生は各々の授業の受講状況に合わせて、オンライン上で提供される教科書・授業教材へのリンク、必要な印刷版資料に関する情報、入手方法等を示した電子メールを受け取ることができます。学生が授業を追加または削除すると、それに応じてオンライン上のコンテンツへのアクセス権限が追加または削除されます。

Lorgan氏は“Equitable Access”と同校が2014年から実施している“Inclusive Access”による教科書提供との基本的な相違について、後者は授業単位で編成されたプログラムであるのに対して、前者はキャンパス規模で編成されたプログラムであることを挙げています。“Inclusive Access”は授業の履修状況によって価格変動が発生するのに対して、“Equitable Access”は授業の履修状況に関わらずセメスター単位の固定価格で提供されます。

その他、 “Equitable Access”プログラムの価格合意に達していない出版社の教科書採用に制限をかけているわけではなく教員の学問の自由は保証されていること、新プログラム開始時に必要なコンテンツの90%以上が提供できることを目標に現在出版社と価格交渉を進めていること、毎学期の支払が保証されるため出版社のトータルの収益を増加させる見込みであること、学生はオプトアウトすることもできるためプログラムへの参加人数が成否を決める見込みであること、などが説明されています。

UC Davis Experiments with a New Textbook Model: An Interview with Jason Lorgan(The Scholarly Kitchen,2019/9/4)
https://scholarlykitchen.sspnet.org/2019/09/04/uc-davis-experiments-with-a-new-textbook-model-an-interview-with-jason-lorgan/

関連:
Inclusive Access(UC Davis)
https://ucdavisstores.com/inclusiveaccess

参考:
SPARC、米国司法省へMcGraw-Hill社とCengage社の合併計画阻止を求める文書を提出
Posted 2019年8月15日
http://current.ndl.go.jp/node/38798

米国教育省、米・カリフォルニア大学デービス校等によるオープン・テキストブックに関するプロジェクトに490万ドルを助成
Posted 2018年10月4日
http://current.ndl.go.jp/node/36775