SPARC、米国司法省へMcGraw-Hill社とCengage社の合併計画阻止を求める文書を提出

2019年8月14日、SPARCは大学教科書出版大手のMcGraw-Hill社とCengage社の合併計画の阻止を求めた文書を米国司法省に提出しました。

両社の合併が実現すると、米国最大の大学向け教材出版社、かつ世界第2位の教育出版社が誕生することになります。SPARCは提出文書の中で、この合併は反トラスト法であるクレイトン法違反であり、合併を許せば大学教科書市場の45%を独占する企業が誕生してしまうこと、現在約40%のシェアを占めるPearson社とともに大学教科書市場がわずか2社による複占状態となる恐れがあることを指摘しています。

米国の大学教科書市場は、学生が価格に関わらず割り当てられた本の購入を求められる典型的な専属市場(captive market)とされています。過去20年間、教科書価格は住宅価格、医療費、賃金を上回るインフレーションが進んでおり、消費者物価指数によると、大学教科書の消費者物価は1998年以降184%上昇しています。これは物価上昇率の3倍にあたります。

SPARCのOpen Education部門でDirectorを務めるNicole Allen氏は、企業間の競争減退による価格の上昇、教材を通して得られる学生のデータがごくわずかな企業に集中してしまうこと等の懸念される悪影響を指摘し、この合併を進めることは認められないとコメントしています。

SPARC Urges Department of Justice to Block Merger Between Cengage and McGraw-Hill(SPARC,2019/8/14)
https://sparcopen.org/news/2019/sparc-urges-department-of-justice-to-block-merger-between-cengage-and-mcgraw-hill/

Opposing Cengage/McGraw-Hill Merger(SPARC)
https://sparcopen.org/our-work/oppose-cengage-mcgraw-hill-merger/

OPPOSING THE MERGER BETWEEN CENGAGE AND MCGRAW-HILL EDUCATION [PDF:49ページ](SPARC,2019/8/14)
https://sparcopen.org/wp-content/uploads/2019/08/DOJ_Filing_08142019830.pdf

Q&A: Cengage/McGraw-Hill Merger(SPARC,2019/7/29)
https://sparcopen.org/news/2019/qa-cengage-mcgraw-hill-merger/

参考:
E624 – ワイリー社−ブラックウェル社の合併と学術図書館界の反応
カレントアウェアネス-E No.103 2007.03.28
http://current.ndl.go.jp/e624

大手出版社の米ランダムハウスと英ペンギングループが合併へ
Posted 2012年10月30日
http://current.ndl.go.jp/node/22199

SPARC、ジャーナル出版社との契約交渉の詳細を比較可能なデータベース“Big Deal Knowledge Base”を公開
Posted 2019年8月9日
http://current.ndl.go.jp/node/38775