新型コロナウイルスにHIVウイルスと不自然に類似したタンパク質が含まれている、と主張するプレプリントがbioRxivに掲載されるも、2日で取り下げられる bioRxivは新型コロナウイルス関連プレプリントに関する注意喚起を表示

プレプリントサーバbioRxivに、世界的に感染が拡大している新型コロナウイルスについて、HIVウイルスと「不気味なほど」(Uncanny)類似したタンパク質が含まれている、と主張するプレプリントが2020年1月31日に掲載されたものの、研究者等から多くの批判を受け2日後の2月2日に取り下げられたことが話題になっています。

元となったプレプリントはインド・ニューデリーの研究者らが投稿したもので、新型コロナウイルス(2019-nCoV)にHIVウイルスと酷似した4つのアミノ酸残基が含まれていることを発見したとしています。抄録ではこの類似を「自然界で偶然、起こるとは考えにくい」と主張していました。しかしこの論文に対しては多くの研究者等から手法や結果の解釈について批判のコメントが寄せられ、週末中の2月2日に著者ら自身によって取り下げられました。このような事態を査読が行われていないプレプリントの問題点と指摘する声もある一方で、取り下げまでのスピードの迅速さを評価する意見もあります。

なお、2020年2月現在、bioRxivでは新型コロナウイルス関連に限らずすべてのプレプリントのページにおいて、bioRxivには現在非常に多くの新型コロナウイルスに関するプレプリントが投稿されているものの、それらは査読を受けていない段階にあるものであって、なんらかの結論が出たものと解釈したり、臨床実践等に用いたり、ニュースメディア等で取り上げるべきではない、という注意喚起が表示されるようになっています。

Uncanny similarity of unique inserts in the 2019-nCoV spike protein to HIV-1 gp120 and Gag. Prashant Pradhan et al. bioRxiv 2020.01.30.927871; doi: https://doi.org/10.1101/2020.01.30.927871

撤回情報のページ
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.01.30.927871v2

Quick retraction of a faulty coronavirus paper was a good moment for science(STAT、2020/2/3付け)
https://www.statnews.com/2020/02/03/retraction-faulty-coronavirus-paper-good-moment-for-science/

参考:
コールド・スプリング・ハーバー研究所、bioRxivに投稿されたプレプリントに並べて査読内容を掲載する試行プロジェクト“Transparent Review in Preprints(TRiP)”を開始
Posted 2019年10月4日
https://current.ndl.go.jp/node/39192