欧州分子生物学機構とASAPbio、投稿前原稿の査読プラットフォームサービス“Review Commons”を2019年12月に立ち上げ

2019年9月30日、欧州分子生物学機構(EMBO)と生命科学分野の出版の加速に取り組む非営利団体ASAPbio(Accelerating Science and Publication in biology)は共同して、投稿前原稿の査読プラットフォームサービス“Review Commons”を立ち上げ予定であることを発表しました。

2019年12月に立ち上げ予定の“Review Commons”では雑誌へ投稿前の原稿が受付され、受付された原稿は雑誌から独立した専門家による厳密な査読を受けることができます。また、原稿の著者はプレプリントサーバbioRxivへ査読内容と自身の回答の公開や、提携雑誌へ“Review Commons”で査読済原稿の投稿も可能になります。

EMBOとASAPbioはプラットフォーム立ち上げの狙いを次のように示しています。一般的に査読は投稿後に行われますが、ある雑誌で投稿がリジェクトされ別の雑誌へ投稿する場合、査読内容の再利用は行われず「再査読」が行われます。“Review Commons”は投稿前に厳密な査読を実施して出版プロセスの合理化と迅速化を実現できる、としています。また、著者はbioRxivの新プロジェクトTransparent Review in Preprints(TRiP)を通して、査読内容や自身の回答を公開することができるため、著者が投稿誌を決定した場合、投稿先雑誌の編集者は既存のレビュー内容に基づいて効率的な編集判断を下すことができることも狙いとして挙げています。

“Review Commons”へは米国細胞生物学会(American Society for Cell Biology)の“Molecular Biology of the Cell”をはじめとする6出版社の17誌が提携し、“Review Commons”の査読を活用すること、リジェクトされた著者は査読内容を再利用して別の提携雑誌へ投稿可能であること、などを表明しています。

EMBO and ASAPbio to launch a pre-journal portable review platform(EMBO,2019/9/30)
https://www.embo.org/news/press-releases/2019/embo-and-asapbio-to-launch-a-pre-journal-portable-review-platform

EMBO and ASAPbio to launch a pre-journal portable review platform(ASAPbio,2019/9/30)
https://asapbio.org/review-commons-announcement

参考:
コールド・スプリング・ハーバー研究所、bioRxivに投稿されたプレプリントに並べて査読内容を掲載する試行プロジェクト“Transparent Review in Preprints(TRiP)”を開始
Posted 2019年10月4日
https://current.ndl.go.jp/node/39192

CA1829 – 査読をめぐる新たな問題 / 佐藤翔
カレントアウェアネス No.321 2014年9月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1829

CA1961 – 動向レビュー:岐路に立つ査読と、その変化に踏み込むPublons / 松野 渉
カレントアウェアネス No.341 2019年9月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1961