Digital Science社、オープンアクセス(OA) の単行書に関する現状調査報告書を公表

2019年6月11日、Digital Science社が、オープンアクセス(OA)の単行書に関する現状を調査した報告書“The State of Open Monographs An analysis of the Open Access monograph landscape and its integration into the digital scholarly network”を公表しました。

得られた主な知見として以下の点等が指摘されています。

・単行書においてはOAまだ比較的小さな位置を占めるに過ぎず、OAの単行書のダイレクトリDOABに掲載されているものは2万点以下である(世界の年間の単行書の出版点数(推計)は8万6,000点)

・Knowledge UnlatchedやTOMEといった事業が、単行書のOAが標準となるような新しいビジネスモデルを試みている

・単行書は人文社会科学分野で中心であり続けているが、その出版技術は、印刷業界や雑誌業界の二ーズによって主導されているため、単行書の大部分は成長するデジタル学術情報基盤から外れている

・出版事業にOAの単行書を加えるにあたり学術出版が直面する課題には、一般的な発見可能性と図書館の目録への組み込みの課題がある。また、販売データが欠如し利用データの取得が困難な中、OAの単行書の価値と流通を評価する課題にも直面している

・同社のAltmetricのデータからは、単行書は幅広い文脈において長期にわたって研究上の影響を生み出しており、雑誌論文に比べて政策文書やWikipediaにおいて高い影響度を示している

また、単行書をデジタル学術情報基盤に完全に統合するための推奨事項として以下の点をあげています。

・オープンな学術基盤が増大するなかで、単行書の発見・監視・影響を支援するために、出版社に対して、本単位かつ可能であれば章単位でDOIを採用するよう促す

・ディストリビューター(Distributor)やアグリゲータ(aggregator)が、相互運用可能な標準形式で利用データを使用可能とし、DOIの一貫した利用によるデータの集約と相互運用性を支援することを推奨する

・助成者は、単行書が学術に貢献する価値を認識し、適切に持続可能な度合でOAへの移行に対して助成する

The State of Open Monographs #DSreports(Digital Science News Blog,2019/6/11)
https://www.digital-science.com/blog/news/the-state-of-open-monographs-dsreports/

The State of Open Monographs
https://digitalscience.figshare.com/articles/The_State_of_Open_Monographs/8197625
https://digitalscience.figshare.com/ndownloader/files/15347819
※二つ目のリンクは報告書本文です[PDF:1.44 MB]。

参考:
オープンアクセス(OA)単行書のダイレクトリDOABに登録されている出版社が100社を突破、登録冊数も3,000冊に
Posted 2015年5月26日
http://current.ndl.go.jp/node/28548

人文・社会科学のOA単行書を出版するイニシアチブ“Toward an Open Monograph Ecosystem(TOME)”(記事紹介)
Posted 2018年4月6日
http://current.ndl.go.jp/node/35807

Knowledge Unlatched (KU) 、2018年度のアクセス数が100万件を超す:昨年比25%増
Posted 2018年9月4日
http://current.ndl.go.jp/node/36595

米国の書籍産業研究グループ(BISG)、オープンアクセスの単行書の利用状況に関するホワイトペーパーを公表
Posted 2019年5月9日
http://current.ndl.go.jp/node/38128

CA1907 – 動向レビュー:欧州における単行書のオープンアクセス / 天野絵里子
カレントアウェアネス No.333 2017年9月20日
http://current.ndl.go.jp/ca1907