オープンアクセス(OA)に関するサービスを提供するカナダの1Science社とScience-Metrix社(いずれも設立者はÉric Archambault氏)が連名で、論文のオープンアクセス(OA)と被引用数の関係を分析したレポートを2016年8月2日付けで公開しました。このレポートではOA論文の方が被引用数が多い傾向があり、それは従来指摘されていたような早期公開の影響によるものではないと結論付けています。
同レポートでは2007~2009年に出版された、Web of Scienceに収録されている論文約335万本を対象に、論文のOA状況と被引用数の関係を分析しています。OA状況については1Science社が作成したOA論文とメタデータのアグリゲーションサービス、OAIndxのデータに基づき、OA雑誌に公開されたいわゆるGold OAのものと、リポジトリ等にセルフアーカイブされたいわゆるGreen OAのものを分けて集計しています。
分析の結果、いずれの分野においてもOAでない論文はOAである論文よりも引用されない傾向があり、OA論文は非OA論文より約1.5倍、引用されていたとのことです。また、非OA、Gold OA、Green OAを比べると、購読型雑誌に掲載され、Green OAになっている論文が最も被引用数が多い傾向がありました。
OA論文の被引用数が多いことはかねてから知られていますが、その理由はarXiv等で、プレプリントとして雑誌掲載前から公開されており、引用される期間が非OA論文よりも長いためで、OAそのものの効果ではないという指摘もあります。しかし1Science社とScience-Metrix社のレポートでは、Web of Scienceの2000年以降の収録論文について、OAIndxへの収録状況(OA状況)を確認し、出版直後の論文はOAになっていないものが多く、出版からしばらく経ってから公開されるものが多い、つまりエンバーゴ期間の影響があり、必ずしもOA論文が早期公開されているわけではないとしています。それにも関わらずOA論文の方が被引用数が多い傾向があったことから、早期公開ではなくOAであることが被引用数と関係しているとしています。
Research impact of paywalled versus open access papers(1Science)
http://www.1science.com/oanumbr.html
参考:
CA1693 – 動向レビュー:オープンアクセスは被引用数を増加させるのか? / 三根慎二 カレントアウェアネス No.301 2009年9月20日
http://current.ndl.go.jp/ca1693
Science-Metrix社、2011年に刊行された論文の半分は既にオンラインで無料で利用できるとの調査結果を公表
Posted 2013年8月23日
http://current.ndl.go.jp/node/24227
EBSCO社、オープンアクセスに関するサービスを提供するカナダの1Science社と提携
Posted 2016年5月6日
http://current.ndl.go.jp/node/31505