米国科学アカデミー紀要(PNAS)における投稿種別と被引用数の関係(文献紹介)

Phil Davis氏が米国科学アカデミー紀要(PNAS)誌の依頼を受けて行った、論文の投稿種別と被引用数の関係に関する研究成果”Comparing the Citation Performance of PNAS Papers by Submission Track”をプレプリント・サーバで公開しています。論文の公開は2016年1月13日で、翌14日には論文の内容を紹介するブログ記事をDavis氏自ら、執筆者の一人として参加している”Scholarly Kitchen”で公開しています。Davis氏は学術情報流通分野で研究活動も行っていた元大学図書館員で、現在は独立してコンサルティング会社を立ち上げています。

PNAS誌には通常の査読プロセスのほかに、米国科学アカデミーの会員用の投稿枠(”Contributed”)が設けられています。この会員用投稿枠での投稿を選択した場合、投稿者は自ら査読者を選び、その査読コメントを付して論文を投稿することができます。会員用投稿枠を利用した論文は通常の査読を経た論文に比べて平均的に被引用数が少ないとする批判がある一方で、突出して被引用数の多い論文も会員用投稿枠には含まれていることがわかっていましたが、従来の研究では分析対象期間が限られていました。

Davis氏の論文では1997年から2014年にかけてのPNAS誌掲載論文の投稿種別と被引用数の関係を分析しています。その結果、確かに一貫して会員用投稿枠を利用した論文の方が被引用数が少ない傾向があるものの、通常の論文との差は縮まっており、2005年には会員用投稿枠論文の方が13.6%被引用数が少なかったのに対し、2014年には2.2%の差になっていた、としています。

Philip M Davis. Comparing the Citation Performance of PNAS Papers by Submission Track. bioRxiv. doi: http://dx.doi.org/10.1101/036616
http://biorxiv.org/content/early/2016/01/13/036616.1

PNAS: Tighter Editorial Policy Improves NAS Papers(The Scholarly Kitchen、2016/1/14付け)
http://scholarlykitchen.sspnet.org/2016/01/14/pnas-tighter-editorial-policy-improves-nas-papers/

参考:
CA1829 – 査読をめぐる新たな問題 / 佐藤翔 カレントアウェアネス No.321 2014年9月20日
http://current.ndl.go.jp/ca1829