2015年3月11日、第28回国際連合人権理事会において、国連の文化的権利に関する特別報告者Farida Shaheed氏による、科学および文化への権利の観点から著作権について検討した報告が発表されました。同日、国際図書館連盟(IFLA)がこの報告を支持するとの声明を発表しました。
声明では、デジタル環境下における国際的な著作権の枠組みが、公益よりも産業的なニーズを優遇し、バランスを欠き、図書館や文書館など非営利の文化的機関に対して、必要な保護を行っていないとする報告の観点について、支持が表明されたようです。また、世界知的所有権機関(WIPO)の加盟国が、図書館及び教育での利用を促進するための著作権の権利制限についての国際的な文書を採択すべきであるという同報告の勧告について強く支持する考えが表明されているようです。
この声明には、米国図書館協会(ALA)、オーストラリア図書館協会(ALIA)、欧州図書館・情報・ドキュメンテーション協会連合(EBLIDA)、米国アーキビスト協会(SAA)などあわせて14機関が署名を行っています。
IFLAは、著作権はあくまで公共の利益と著作者の権利のバランスをとるために存在するものであることも言及しており、今回の報告によって、著作権問題に関する議論が国際的に活発化し、著作権法に関する人的価値や社会的価値について新たな考えを生むきっかけとなればと考えているようです。
Global Library and Archives Community welcomes new United Nations report (IFLA, 2015/03/11)
http://www.ifla.org/node/9455
Global Library and Archives Community welcomes new report from United
Nations Special Rapporteur on Copyright Policy and the Right to Science
and Culture(IFLA, 2015/3/11)
http://www.ifla.org/files/assets/clm/statements/global-library-and-archives-community-welcomes-new-report-from-un.pdf
Report of the Special Rapporteur in the field of cultural rights, Farida Shaheed(United Nations, 2014/12/24)
http://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=A/HRC/28/57
Issue in focus: the impact of intellectual property regimes on the enjoyment of right to science and culture (United Nations Human Rights)
http://www.ohchr.org/EN/Issues/CulturalRights/Pages/impactofintellectualproperty.aspx
関連:
第333回:TPP交渉の透明化と著作権の権利制限の拡充を唱える国連の報告(無名の一知財政策ウォッチャーの独言, 2015/3/5)
http://fr-toen.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/post-8010.html
参考:
E1542 – WIPOで,図書館等に関する著作権の権利制限が議論される
カレントアウェアネス-E No.255 2014.03.06
http://current.ndl.go.jp/e1542
第28回世界知的所有権機関(WIPO)著作権等常設委員会(SCCR)が開催、図書館やアーカイブにおける著作権の権利制限等について議論
Posted 2014年7月15日
http://current.ndl.go.jp/node/26578