保存修復家、書物と過ごした63年間のキャリアを閉じる(記事紹介)

米Detroit Free Press紙に、ミシガン大学アナーバー校図書館で働く保存修復家(コンサバター)、クレイヴン(Jim Craven)の半世紀以上のキャリアを紹介する記事が掲載されています。

御年81歳。63年間にわたるキャリアの末に引退することを選びました。ミシガン大学の歴史上、これだけ長い間勤めたものはいないそうです。彼は1947年、まだ高校生だった時分に、大学のある図書館の地下にあった製本所で働き始め、1949年に高校を卒業すると、そのままフルタイムの職員として働くことにしました。地元アナーバーでミシガン大学の製本工の息子として生まれ育ったクレイヴンは、ミュージシャンになることを夢見つつも、定職を探していたということです。1951年ごろには韓国や日本へ従軍し、「仕事があるならそれを続けよう」と思うようになったと述懐しています。

クレイヴンは、ぼろぼろになった本を再び誰かが使えるようにするこの仕事が好きだと言います。彼の修復したことのある書物には、1300年代に遡るという非常に古いもの、あるいは蛇腹のようなものがついていて音を奏でることのできる変わったものもあるそうです。そんな彼の仕事に触れたものは、クレイヴンのことを“芸術家”と呼ぶと言います。

彼はこの仕事を楽しんでいるということですが、家族、そして愛犬のゴールデンリトリバーと一緒に過ごす時間を持つために、このたび引退の道を選びました。けれども、時々はふらっと工房に立ち寄って仕事がしたいとも話しています。電子化の時代にあっても、彼は、修復の技術は求められていると考えています。

「我々は今もなおオリジナルを見たいと思っている。人々は本物が見たいんだよ。」という彼の言葉で、記事は締めくくられています。

U-M conservator closing the book on 6-decade career(Detroit Free Press 2012/11/30付け記事)
http://www.freep.com/article/20121130/NEWS05/311300127/-1/7daysarchives/U-M-conservator-closing-book-6-decade-career