Association of University Presses(AUPresses)とIthaka S+R、学術単行書のオープンアクセス(OA)版が印刷版の売上に与える影響に関する報告書を公開

2023年9月19日、世界各国の160余りの大学出版局が参加するAssociation of University Presses(AUPresses)と学術文化コミュニティを支援する米国の非営利団体Ithakaの調査部門Ithaka S+Rが、学術単行書のオープンアクセス(OA)版が印刷版の売上に与える影響に関する報告書“Print Revenue and Open Access Monographs”を公開しました。

印刷版のほかに無料で閲覧可能なOA版が提供されている学術単行書について、その印刷版の販売実績の把握が試みられています。調査では、AUPressesに参加している26の大学出版局から提供された、2005年から2022年までに出版された976冊のOAタイトルについて、データ分析が行われています。

報告書では、分析の結果、以下のような知見が得られたとして、学術単行書のOA出版がもたらす影響について考察しています。

・OA版は多額の印刷版収益を生み出す可能性がある。
・OA版は有意義なデジタル収益を生み出す可能性がある。
・売上は分野によって大きく異なる。

なお、今回の分析に利用されたデータセットは、人文学分野の非営利ネットワークである“Humanities Commons”のウェブサイトで公開されています。

New Report Analyzes Print Revenue of Open Access Monographs(AUPresses, 2023/9/19)
https://aupresses.org/news/new-report-analyzes-print-revenue-of-open-access-monographs/

Brown, Laura et al. Print Revenue and Open Access Monographs: A University Press Study. Ithaka S+R, 2023.
https://doi.org/10.18665/sr.319642

Data: Print Revenue and Open Access Monographs(Humanities Commons)
https://hcommons.org/deposits/item/hc:59547/
※分析に利用されたデータセットです。

参考:
米国の大学コンソーシアムBig Ten Academic Alliance(BTAA)、学術単行書のオープンアクセス化を目指す“Big Ten Open Books Project”を立ち上げ:第一弾として100タイトルを公開 [2023年08月25日]
https://current.ndl.go.jp/car/190810

米・マサチューセッツ工科大学出版局、“Direct to Open”(D2O)モデルにより学術単行書等82点をオープンアクセスで公開すると発表:2023年分として [2023年08月25日]
https://current.ndl.go.jp/car/190798

人文・社会科学分野のオープンアクセス(OA)の単行書の出版を促すイニシアチブ“Toward an Open Monograph Ecosystem”(TOME)の最終報告書が公開 [2023年08月23日]
https://current.ndl.go.jp/car/190749

Springer Nature社、OA単行書の利用状況を分析したホワイトペーパーを公開:ダウンロード数は非OA単行書の10倍、被引用数は2.4倍 [2020年09月15日]
https://current.ndl.go.jp/car/42001