CA906 – 青森県の図書館ネットワーク構想 / 隅山恵子

カレントアウェアネス
No.170 1993.10.20


CA906

青森県の図書館ネットワーク構想

自治省では,情報通信システムの開発に関連する事業として地域情報ネットワーク整備構想(コミュニティ・ネットワーク構想)を策定し平成3年6月各地方公共団体に提示した。本構想は,現在使われているコンピュータの機種に関係なく,全国の地方公共団体で利用できる標準的なモデルシステムを開発し,ネットワークを拡げていくことを目的としている。

その構想の一つとして図書館情報ネットワーク・システムがある。平成3年度には北海道北見市,青森県,東京都東多摩北部都市広域行政圏協議会(後辞退),山梨県,長崎県佐世保市の5団体が推進プロジェクトの指定を受けている。コミュニティ・ネットワーク構想に基づいて開発されるモデルシステムは,全国に共通する「標準化」部分と,各地方公共団体が付加するオプション部分から構成されているが,図書館情報ネットワーク・システムにおいては,相互貸借のシステム基盤となる所蔵館把握のための総合目録構築を中心に検討が行われ,センター館には,相互貸借のための総合目録データベースを構築することになっている。

現在新館を建設中で,平成6年3月にオープン予定の青森県立図書館は,平成3年度に自治省の図書館情報ネットワーク・システムの事業指定をうけ,移転と同時にコンピュータ・システムを導入し,市町村立図書館へのバックアップ体制を強化するネットワーク構想(Applins−仮称)を打ち出している。この市町村立図書館とのネットワーク・システムは,県立図書館が行う固有のサービスと,自治省のシステムによる図書館情報ネットワーク・システムの中でセンター館として機能するという部分の二本立の運用を行うことになっている。

前者では,まず県立図書館が単独で市町村立図書館や一般利用者に対してサービスする県立図書館回線利用者サービスがある。提供するサービスは,県立図書館所蔵データベースの検索と画像の検索の2点がある。また電子掲示板・電子メール機能を用いて,加入図書館間のメッセージ交換を行い,さらにレファレンス・データベースを用意して,協力レファレンスに利用することも考えられている。

一方,自治省のシステムは青森県内公共図書館間のネットワーク・システムで,ここでは書誌フォーマットの標準化による総合目録データベースの構築をめざしている。ネットワーク加入にあたっては,自治省標準ソフトウェアが市町村立図書館に無償で配布されるが,ハードウェア,基本ソフトウェア等については加入館が整備し,又,各館の所蔵データの定期的登録更新に関する経費も加入館の負担となる。その見返りとして,参加館はセンター館(県立図書館)の総合目録データベースを検索し,所蔵館に対して貸出依頼のメッセージを発信し,所蔵館の応諾メッセージ発信によって,現実の物流が行われるというシステムになっている。

青森県内ネットワーク・システムは,自治省の図書館情報ネットワーク・システムの先行的事例として,今後の成果が注目される。

隅山恵子(すみやまけいこ)

Ref: 図書館雑誌 87 (4) 213-215, 1993
地方自治コンピュータ 23 (4) 6-11, 24-30, 1993
とりつたま (9) 67-71, 1993