CA888 – 米国における法律情報提供サービス / 藤巻正人

カレントアウェアネス
No.167 1993.07.20


CA888

米国における法律情報提供サービス

法律情報の提供に関する米国の最近の動向をいくつか取り上げてみる。

公共図書館において法律情報の提供は,多様な図書館サービスの一つに過ぎない。しかしレファレンス全体の8%に達する図書館もある。公共図書館に法律情報を調べに来る理由は,働いている人にとり開館時間の都合のいいこと,法律情報以外にも用があること,ある地域ではそれが唯一の図書館であること,雰囲気が親しみやすいこと等によるものらしい。しかし公共図書館には,法律に関する質問に答えるために必要な訓練を受けている図書館員はほとんどいないのが実情である。法律に関する質問は簡単には回答できないのが普通であり,資料も公共図書館にはほとんど揃っていない。

そのような制約がある中で,多くの公共図書館は創造的な方法で法律図書館および行政機関と協力している。その第一は,スペースの共有である。ヴァージニア州フレデリックスバーグでは,公共図書館と公共法律図書館とが,資金および運営が別々であるにもかかわらず,1つの建物を共同で利用している。入口および開館時間は別々であるが,職員および専門サービスの面では協力しているのである。

第二は,地域の弁護士会との協力である。カリフォルニア州では公共図書館と弁護士会との共催で,ボランティアの弁護士が夕方,利用者の相談にのる機会を設けている。また別の図書館では,無料のセミナーや法律に関する無料のパンフレットの配布を通して,法律情報を提供している。

第三は,レフェラル・ネットワークである。いくつかの地域では,公共図書館,地方公共団体,または民間・公共機関の提携によってI & R(Information & Referral)センターを設けている。このネットワークは,法律上の問題を抱えている住民と,相談に応じてくれる組織または個人とを結び付ける役割を果している。

利用者が法律に関する情報を得ようとして公共図書館に来た場合,必要な情報が得られる可能性は,それを扱う図書館員の経験,蔵書量,および図書館ネットワークに大きく左右される。そのためレフェラル・ネットワークの確立,公共図書館員のための法律レファレンスの研修の開催,設備の共有のために,法律図書館と公共図書館とが協力していく必要がある。

一方,法律図書館においても様々な工夫がなされている。その一つにリーガル・リサーチ・ガイド(LRG)がある。LRGとは,特定の事項(「弁護士を選ぶ」等),資料の形態(判例等),密接な関係にある項目(「法案と法律」等)等を説明したものである。1枚の紙に簡潔に記されているものも多い。

ニューメキシコ大学法律図書館では1989年に最初のLRGを作成した。このLRGは成功しており,現在では35タイトルに達している。LRGの目的は,法律の訓練を受けていない利用者の手助けをすること,よく聞かれる質問に答えること,めったに聞かれない困難な質問に答える時の手助けになること,LRGの執筆を通じて係員を訓練することにある。LRGには判例や制定法などの初歩的なものから,条約などの高度なものまであるが,ニューメキシコ大学法学部の学生の多くは全てのLRGを持っており,ときには新しいガイドの作成の際に図書館員に協力することもある。法学部以外の学生は,何の準備もなく図書館に来ることが多いので,判例,制定法等初歩的なLRGがあればたいへん助かる。一般の利用者のLRGの用い方は法学部以外の学生の用い方と共通するものがある。一般の利用者は,本人訴訟について調べに来ることも多いので,そのような場合には,よく聞かれる離婚,遺書,信託,裁判所書式についてのガイドがあれば役に立つであろう。

LRGは法律図書館においてはまだ新しい道具である。しかしこれから,その重要性はさらに増すであろう。弁護士費用を節約して本人訴訟を行おうとする利用者も増えるであろうし,図書館の予算は伸びずに人員も抑えられるであろうから,その面でもLRGは有効なレファレンスの助け手となるであろう。

LRGを含め,限られた資源を活用して効果的なサービスを行うためには,調査が必要である。米国法律図書館協会(AALL)では,重点的調査課題の明確化を目的として,法律図書館(LL)を対象に1990年にアンケートを実施した(108館回答)。それによると,1年以内または5年以内に調査が必要との回答が65%以上あった項目は,1.機械化(CD-ROM,データベース等)の影響(90.4%),2.LL業務のための新しい方法(82.3%),3.LLの質の評価(68%),4.弁護士たちの実際の調査方法(67.9%),5.図書館予算配分パターン(65.7%),6.利用者教育の向上(67.5%),の6項目であった。

AALLの1992年の第85回年次大会では,公的情報にアクセスする方法が狭められるおそれが増しつつあるこの混乱した時代において,法律関連情報を一般に広めるという法律図書館の根本的役割を認識する必要があるということが確認された。そのための行動が必要な時である。

藤巻正人(ふじまきまさと)

Ref: Millican, Rita et al. Research needs in academic law libraries. Law Libr J 84 (3) 421-438, 1992
Anson, Crystal et al. A survey of legal research guides. Ibid., 543-557
Crowther, Janet L. Legal information for the public. Ibid., 559-565
Hinckley, Steven D. The case for law librarians. Libr J 117 (14) 143-145, 1992