CA874 – ナショナル・レファレンス・サービス:レファレンスの振り分け / 高山直也

カレントアウェアネス
No.165 1993.05.20


CA874

ナショナル・レファレンス・サービス
−レファレンスの振り分け−

National Reference Service(以下NRSと略す)が米国議会図書館(LC)の中に置かれたのは1991年の6月である。同月,改装工事のため1987年12月以来休室していた大閲覧室(Main Reading Room)も再開している。

NRSはLCに寄せられる電話や手紙のレファレンスの最初の窓口になって,そこで処理できないものについて各専門室・課に振り分けるのが仕事である。こういうことは以前は大閲覧室課の一係(Telephone Reference,Correspondence and Bibliography Section)がやっていたが,最近はどこに問い合わせたらいいかわからない利用者からの電話や手紙があらゆる課に侵入してくるような状態が出てきたために,一般的な利用案内の必要が感じられるようになってきた。それにこういう電話が多くなると,そっちに気をとられて専門室にやってくる利用者に対して十分な対応ができなくなる。そこで今度の機構改革では,一係であったものを課に昇格させてNRSの創設となったもののようである。(レファレンス窓口の一本化というだけのことなら,国立国会図書館でもやっている)

現在では各専門室・課へのレファレンスはまずNRSで受けて,そこですぐに回答の出せないものについてだけ各専門室・課にまわすようになっている。職員数は8名に実習学生が1人。レファレンス件数は一日300件をこえる。そのうち電話が約275件,手紙とファックスが50件である。NRSの職員はオンライン目録,LCの作成物,刊行書誌および各種案内,専門情報ファイル,NRS備え付けの参考資料を使って利用者からのレファレンスに答えているわけだが,利用者の種類は様々であり,質問の内容も多岐にわたっているので,それらに対してすばやく的確に対応できるようにNRS職員は各種のブリーフィングや館内見学にも参加して知識を深めるように努めている。

このNRSが行っているレファレンスの振り分けは,LCを最も効率的に使ってもらうということのほかに,利用者にもっと自分の地域あるいは州の公共図書館を利用してもらうことも目的としている。事実,NRSで受けているレファレンスの中には,利用者の地域の公共図書館で十分に解決のつくものが多いのである。そこで,NRSではCorrespondence Referral Programにもとづいて,州の図書館で解決できるようなレファレンスについては,そちらに手紙を回送することにしている。このプログラムはLCで受けとった手紙を加盟の州立図書館に回送して,そこから回答してもらうことができる取り決めで,利用者には自分の手紙がどこの図書館に回付されているかが知らされる。その逆に,州立図書館の方でも自分のところで受けとった手紙をLCに回送することができるわけである。(前者については国立国会図書館ではまだおこなわれていない)。そうしてそれぞれの図書館では回送されてきた手紙を優先的に扱うことになっている。

このレフェラル・プログラムがオレゴン州立図書館との間で試験的に開始されたのは1979年からで,現在では五十州すべての州立図書館がこの協定に加盟している(そのほかにカナダ国立図書館とDistrict of Columbiaも加盟)。

学生対策は国立国会図書館でも頭を悩ませている問題のひとつだが,NRSでは学生からレファレンスを受けると,所属大学の図書館の司書や担当の先生に連絡をとって,こういう情報源が役に立つという案内をしてから,あとで人文・社会科学課と協力して一枚くらいのリストを作って送ってやったり,ほかの学生も共有できるようにLCの利用案内を一セット手紙に添えて大学図書館に送ったりしている。そうしてLCは学生にとって決してレファレンスの最初の窓口ではないということ,地域の図書館にも役に立つ情報源はあるのだということを周知させるようにしている。

高山直也(たかやまなおや)

Ref: Suddreth, Lucy D. National Reference Service: centralizing library access. LC Inf Bul 51 (22) 487-489, 1992. 11. 16