カレントアウェアネス
No.164 1993.04.20
CA872
中国の大学図書館における業務機械化
−マイクロコンピュータとCD-ROM−
中国の大学図書館では,1980年代から業務機械化への積極的な取組みが始まった。マイクロコンピュータを業務全般に導入して図書館機能の高度化を図り,更には広汎なネットワークの構築を目指して研究が続けられている。
上海交通大学では,1986年IBM PC/XTによって,中国初の完全な貸出管理システムを稼動させ,1988年からは,HP-3000/39とHP-3000/930によって,収集,整理,貸出,逐次刊行物コントロール,オンライン目録,図書館管理のサブシステムをすべて取込んだ図書館総合管理システムの開発を進めている。深■[■は土偏に川]大学で開発されたSULCMISという図書館総合管理システムは,国内標準及び国際標準に合致した互換性に優れた仕様で,フロッピーディスクに蓄積されたMARCデータを図書館のデータベースに転換することもでき,今後モデルシステムとして活用されるものと考えられる。
1980年代後半以降その研究開発に拍車がかかる一方で,問題点もいくつか顕在化した。第一に,コンピュータの容量不足から,書誌情報の大量蓄積や遡及入力作業が困難となっていること。第二に,中国語情報交換,MARCフォーマット,目録,分類,索引体系,漢字処理のコードが標準化されていないこと。とりわけ,コンピュータの容量不足は決定的な障害である。
北京郵電大学図書館の馬館長は,近年技術革新の著しいCD-ROMに注目し,中国の大学図書館の業務機械化は,マイクロコンピュータとCD-ROMの結合によるのが最善かつ現実的だと主張している。
中国では,経済的にも技術水準から言っても,アメリカのような高度情報化社会における図書館業務機械化のモデルを,そのまま模倣することはできない。電話回線は不足し,図書館の大半は高額の通信費が負担できない。
コンパクトディスク1枚の容量は最大660メガバイトで,書物の26万頁分,フロッピーディスク1,500枚分に相当する。しかも,安価で処理速度も勝る。標準化に関しても,CD-ROMの効用は大きい。例えば,OCLCオンライン書誌情報システムのCD-450は,米国議会図書館の標準書誌データを提供してくれるので,これを基礎にすれば国際標準に合致した書誌データベース構築が可能となる。China/MARCフォーマットを利用することになれば,中国語資料についてもCD-ROMの効用が増大する。通信回線を使用せずにオンライン検索ができることも利点のひとつである。
CD-ROM技術の発達は目覚ましく,図書館で利用できる製品も数多く開発されている。中国の大学図書館は,マイクロコンピュータ-CD-ROMシステムを導入する経費くらいは負担でき,その活用法も心得ている。容量,標準化,コストの問題を同時に解決できるCD-ROMを取込むことによって,中国の大学図書館の業務機械化は急速に進展するであろう。
岡村志嘉子(おおむらしがこ)
Ref: Ma, Ziwei, et al. Microcomputers and CD-ROM: an optimum choice for library automation in China. The Electronic Library 10 (1) 53-57, 1992