CA842 – 本の新しい販売方法 / 中村規子

カレントアウェアネス
No.159 1992.11.20


CA842

本の新しい販売方法

第1回国際電子出版展(開催:'92年6月,東京・池袋)において見られたように,実に多種多様な電子出版物が刊行されている。この電子出版物の出現などが引き金となって,従来とは異なった図書や百科辞典の販売方法が試みられるようになってきた。

米国でもついこの間まで,百科辞典の販売にはセールスマンが個別に家庭や学校,図書館を回る訪問販売の方法が採られていた。販売経費のほとんどが訪問販売に費やされる経費だったのである。しかし,生活様式の変化により,最近では日中家庭に人がいなくなったことから,他の効果的な販売方法が探られるようになった。例えば,米国7位の大手出版社であるEncyclopaedia Britannica, Inc.ではChildren's Britannicaをダイレクトメールにより,New Encyclopaedia Britannicaは書店,ブックフェア等で販売するほか,ケーブルTVや雑誌で広告するようになった。Compton's Multimedia Encyclopedia等CD-ROM版のものは,自社のセールスマンによる販売,カタログ販売も行っているが,コンピュータ・ショップでハード機器と一緒に販売するという方法を採るようになった。

同じく米国で13位の出版社であるGrolierも,現在では電話やダイレクトメールによる販売方法を用いているほか,スーパーマーケットに置いたり,ホームパーティ商法などの新しい販売方法も採用している。また,このGrolierは百科辞典の電子化を最初に試みた出版社である。CD-ROM版のNew Grolier Electronic Encyclopedia等は,Britannicaの製品と同様,コンピュータ・ショップで,場合によりCD-ROMドライブと一緒に販売している。

一般書籍の販売については,フランスのミニテルなどが有名だが,日本でも現在,書籍に関する総合パソコン通信サービス(有料)を提供するシルクネットブック倶楽部という会員組織がつくられつつある。これは,自宅に居ながらにして新刊書の検索や代行検索,さらに購入を可能にするものである。

中村規子(なかむらのりこ)

Ref: Whiteley, Sandy. Encyclopedias today: tradition meets innovation. American Libraries 23 (5) 402-406, 1992
Washington Post 1992.7.5