カレントアウェアネス
No.139 1991.03.20
CA727
書誌情報の充実と機械化−中国国家図書館の動きから−
1987年に新館を完成させた中国国家図書館は,いま図書館業務のコンピュータ化に力を注いでいる。このうち,書誌情報の機械化という面では,全国書誌データセンターとしての地位を確立するという目標が掲げられ,中国語書誌コントロールを重点として作業が進められている。
全国書誌編纂作業は,1985年,館内に『中国国家書目』編集委員会が設けられて本格化した。1985年版,1986年版,1987年版が,1987年以降順次手作業で完成した。1988年には機械編纂が始まり,冊子体目録に加えてフロッピー・ディスク,磁気テープ,光ディスク形式の目録作成も準備が進んでいる。1988,89年の書誌データは既に入力済であり,昨年9月からフロッピー・ディスク版の発行が試験的に始まった。また,昨年7月からは新着図書MARCの編纂も始まり,毎月平均3,000タイトルの書誌データが,フロッピー・ディスクと磁気テープにより提供されることになった。
古典籍に関しては,1983年以来,文化部の指導の下に中国国家図書館等が中心となって,全国790余の機関の所蔵する古典籍を網羅した『全国古籍善本書目』の編纂が進められている。現在,叢部,経部,史部の善本目録が既に出版済で,子部,集部についても間もなく完成する。昨年末からは,索引編纂作業が始まった。そのほか,中国国家図書館では,中華民国時代の中国語図書,雑誌,新聞の総目録も作成した。
書誌編纂作業を進める際の大きな課題が,標準化である。中国国家図書館内に置かれた全国情報文献工作標準化技術委員会第五分会が中心となり,1980年に『中国図書館図書分類法』と『漢語主題詞表』(シソーラス)を国家標準とする方針が打ち出された。10年の試行期間を経て,同『分類法』は正式に国家標準とされたが,シソーラスについては,『漢語主題詞表』を取り込んで新たに『国家主題詞庫』が編纂されることになった。
件名標目表,目録規則,CIP等に関しても国家標準化が進んでいる。また,『中国MARCフォーマット』,『漢字属性字典』を始めとして,コンピュータ処理関連の国家標準も各種制定された。
中国国家図書館は現在,国家標準の制定に力を尽すと共に,大型コンピュータによる収集から利用までの全面的管理の実現に向けて動き始めている。全国規模の中国語書誌データベースを構築し,多言語処理による書誌情報センター,文献検索センター,オンラインネットワークセンターとなることを目指すという。
以上,昨年10月に行われた中国国家図書館との業務交流における中国側の報告から紹介した。
岡村志嘉子(おかむらしがこ)