CA654 – 米国議会図書館(LC)の増収策、延期に / 坂本博

カレントアウェアネス
No.127 1990.03.20


CA654

米国議会図書館(LC)の増収策,延期に

アメリカの著作権法は公務員が職務として作成した著作物は国民のものであるとして,これに著作権を認めていない。従って,LCの印刷カードを丸ごとコピーしてLCより安価に販売して利潤を上げている民間の会社があっても,LCは「大きな目で見れば図書館界の役に立っているのだから」と黙って見ているほかはなかったのである。

さすがのLCも単価の高いUSMARCテープでこれをやられてはたまらないと,販売条件に「丸ごとコピーして再販売しないこと」を課し,1986年からは「アメリカ著作権法の及ばない外国向けと称してUSMARCに(C)表示をしてきた(他のLCの刊行物には現在も(C)表示はない)。

昨年の7月にLCはさらに一歩を進め,1990年1月からUSMARCの購入者は,データを再提供する機関名をLCに報告すると共に,50%以上のデータを再提供する場合には別に割増料金を払う旨の「ライセンス契約」を結ぶよう購入機関に通知した。同時にビリントン館長は今回の計画がLCの財政難を救うためのもので,USMARCの恩恵に一方的に浴している外国の図書館をターゲットに,USMARCのコストを負担させて図書館界全体の利益をはかるものだと声明を出した。

これに対してアメリカの館界は,試算によると従来の3万ドルのテープ代の他に600万ドルの追加料金を払わなければならなくなるとするOCLCを始め,RLG,ARLなどから大きな反対の声が上り,図書館雑誌の投書欄をにぎわせた。海外でもイギリスのNELINETが連邦議会の両院合同図書館運営委員会に抗議を行った。LCのアブラム整理業務担当副館長は「OCLCが600万ドルも払うことになるほど再提供を行っているとは知らなかった」と率直な感想を述べている。

反対論の主張は「LCが得をしても図書館界全体にマイナスでは意味がない」ということだが,その法的根拠は前述の著作権法である。OCLCが訴訟も辞さないと息まき,連邦議会が公聴会を開くよう議員に手紙を書く運動が行なわれた結果,たまりかねたLCは,昨年11月にライセンス制導入の「延期」を表明し,かわりにテープ代を一律に大幅に引上げることにした。OCLCは,増収より経費削減に協力すると,LCの目録作業にOCLCの便宜提供を逆提案している。

これだけの大騒動になった以上,LCがUSMARCを名目にアメリカの図書館から金を集めることは不可能になったと思われるが,アメリカ政府に税金を収めていない外国に対しては,再攻勢の可能性が多分にあるといえよう。

ひるがえって我が身を見れば,JMARCやJBISCも,日本の館界に普及すればするほど,国立国会図書館の側だけで利用条件を一方的に決められなくなっていくであろう。

坂本 博