CA699 – 米国議会図書館(LC)新増収策も延期に / 坂本博

カレントアウェアネス
No.135 1990.11.20


CA699

米国議会図書館(LC)新増収策も延期に

MARCテープの利用にライセンス料をとるというLCの増収策は事実上撤回されたが(CA654),新たに法律を制定して,従来原価プラス10%で行なわれていた有料サービス(複写,印刷カード,出版等)に「間接経費」を上乗せできるようにし,その収入を回転資金として新たなサービスの原資にするという提案が,図書館界の反対で,来年1月立法化の延期を余儀なくされた。

法案は,LCが独自に運用できる基金とするため,国費を与えられていない――つまり独立採算の――複写,書誌情報頒布などの事業について直接の原価の他に「間接経費」の上乗せを認め,この収入によって翻訳やドキュメント・デリバリーなどの新しいサービスを行えるようにするものであるが,さすがに伝統的に無料であったサービスを脅やかしたり,有料化したりすることは禁止していた。前回のライセンス料事件で抗議の投書が殺到したのに閉口した議会筋の意向によるといわれているが,LCは調査図書館協会(ARL)とALAの大会でアドバルーンを上げた。その結果は「一体どこまでが間接経費なのか」という問題もさることながら,館界のリーダーの猛反発に会い,ビリントン館長は来年の1月からは実施しないと表明せざるを得なくなった。ARLの大会で「LCの民営化だ」と批判されたのが気に障ったのか同館長はわざわざ「LCが民営化されつつあるなどということはない。基本的な機能の資金を料金に求めるつもりは全くない」と発言している。

坂本 博(さかもとひろし)

Ref: De Candido, Graceanne, et al. LC “privatization” envisioned at ARL in New Orleans. Library journal 115 (10) 27, 1990.
LC defers fee prposal: Billington meets ALA Board & Legislative Committee. Library Journal 115 (15) 43, 1990.